小股とはどこのこと?”小股が切れ上がった”の本当の意味は

いい女 言葉

江戸時代から使われている、女性をほめる言葉に「小股の切れ上がったいい女」というのがあります。

今ではあまり使われない「小股の切れ上がったいい女」という言葉ですが、女性が和服を着ていた江戸時代には、これ以上ない「女性をほめる言葉」として頻繁(ひんぱん)に使われていました。

自分好みの女性を見たとき、江戸っ子は「小股の切れ上がったいい女だねぇ」なんて言いました。

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小股とはどこのこと?

「小股が切れ上がったいい女」の「小股」には、『男性が惹かれる(魅力を感じる)女性の躰の部分』という解釈があります。

「小股」が躰のどの部分をさすのか、何をさすのかには諸説あります。

①うなじ

②切れ長な目

③股の付近

④脛(すね)から、膝頭までの部分

⑤足首のアキレス腱の部分

⑥足の親指と人差し指の間

江戸のころも現在も女性の好みは人それぞれです。女性に一番魅力を感じるところも人それぞれで、「小股」には多くの解釈があるようです。

①②は「小股」なのに、上半身を指しています。

浮世絵に描かれているような、色っぽく髪が結あがっている女性の「うなじ」や、化粧をしている色っぽい女性の「きれ長な目」は、江戸っ子の憧れでした。

③④はすねから上の脚(あし)です。

和服姿の女性が着崩した時に、裾からちらりと見える脛や膝や太ももに、江戸っ子は色気を感じました。

⑤⑥は足首から先の足(あし)です。

足首が細くアキレス腱がくっきりと見えるほどの筋肉質で太っていない女性や、足袋を履いたときに足の指の間がキリッとしてるような、足元にまで気を使っているようなスキのない女性は、江戸っ子に好かれました。

「小股の切れ上がったいい女」の「小股」を躰の一部として捉えると、諸説ありどの部分か断定することはできませんが、小股は『男性が惹かれる(魅力を感じる)女性の躰の部分』という解釈になりそうです。

「小股」を名詞として(躰の部分として)単独で使用することはありません。「小股」は他の語と一緒に使って、一つの言葉となります。

「小股を掬(すく)う」を大辞林第三版でひくと、1・相撲で相手の股を内側からすくいあげて倒す。小股を取る。2・相手のすきをねらって、自分の利益をはかる。小股を取る。とあります。

1の意味だと、「小股」は躰の「股」の部分を指していますが、2の意味だと躰の部分ではなく「隙(すき)」という意味になります。

「小股の切れ上がったいい女」の「小股」にも、『男性が魅力を感じる女性の躰の部分』という解釈とは別の解釈があります。

小股は躰の部位を指す言葉ではありません?

「小股の切れ上がったいい女」の「小股」には『男性が魅力を感じる女性の躰の部分』とは別の解釈もあります。

A・「小股」は躰の部分ではなく単に「股」

B・ちょっとした動作

Aの単に「股」とは、「小股が切れ上がった」で一つの意味をもつ言葉で、「股」には意味がないという解釈です。「小耳に挟む」の「耳」などと同じ解釈です。

「小耳に挟む」は、「聞くともなしに聞く」という意味で、小耳という躰の部分に何かを挟むことではなく、「小耳」は単に「耳」で、「耳」には意味がありません。

「小股の切れ上がった」は、「スタイルの良い様子」を意味する言葉で、細かく体型を断定する言葉ではありません。

江戸っ子は、大げさな表現をきらいます。言葉の響きを和らげ、イメージしやすいように、江戸っ子は言葉の頭に「小」を使った言い回しをよく用いました。

「小」を使った言葉には「小ざっぱり」「小ぎれい」「小汚(こぎたな)い」などがあります。

「小ざっぱり」は、手入れが行き届いた清潔な様子を表現した言葉です。「さっぱりした」というより「小ざっぱりした」という方が、想像力がふくらみ、あれこれイメージしてしまいますよね。

「小股が切れ上がった」とは、「小ざっぱり」と同様に自分の好みを大げさに具体的にいうのではなく、「スタイルの良い様子」を照れ屋の江戸っ子風に言った言葉、という解釈です。

「小股」を大辞林第三版でひくと、1・両足の開きが狭いこと。「―で歩く」2・股。また、股に関するちょっとした動作をいう語。とあります。

1は躰の部分ではなく仕草で、2にも躰の部分ではなく、動作という解釈があります。

Bのちょっとした動作とは「何気ない仕草や態度」を意味し、「小股の切れ上がった」は「色っぽい仕草」あるいは「凛とした態度」という解釈です。

色っぽいと感じる動作は人によって違うので、具体的にどういう仕草かは断定できません。

女性が座るときに和服の裾を合わせる仕草だったり、うなじの汗をふく仕草だったり、何気ない仕草に江戸っ子は色気をかんじていたようです。

色気っぽい仕草の女性に惹かれる一方で、江戸っ子は「凛とした態度」の女性にも惹かれたようです。隙(すき)がなく、「凛とした態度」で振舞う女性は、江戸っ子の憧れでした。

「小股が切れ上がった」の意味

女性のどこに惹かれるか(小股をどう捉えるか)?で「小股の切れ上がった」の意味は変わります。

「うなじ」に惹かれるなら「きりりと髪を結い上げたうなじ」、「切れ長な目」なら「化粧をして強調された切れ長な目」、「股のふきん」なら「太ももから股間にかけてのライン」、「脛から膝頭にかけて」なら「和服の裾からみえる脚のライン」、「足首のアキレス腱の部分」なら「細い足首と筋張ったアキレス腱」、「足の親指と人差し指の間」なら「足袋を履いた時の親指と人差し指の間にできる綺麗なライン」を意味します。

躰の部位ではなく「小股」を「単なる股」と解釈するなら、「小股の切れ上がった」は「スタイルの良い様子」を意味します。

「小股」を「何気ない仕草や態度」と解釈するなら、「小股の切れ上がった」は「色っぽい仕草」あるいは「凛とした態度」を意味します。

「小股」には、完璧な定義がありませんが、小股を『男性が惹かれる(魅力的に感じる)女性の姿態』と捉えるならば、「小股が切れ上がっている」は、『男性が惹かれる女性の姿態が強調されている』という意味になります。

「小股の切れ上がったいい女」は、こういう女性

「小股の切れ上がったいい女」とは『男性が惹かれる(魅力的に感じる)女性の姿態が強調されたいい女』です。

頭のてっぺんから足の爪先まで手入れが行き届き、肥満体ではなく、筋肉質で足首がしまっていて、手足が長く、いつも凛としといて、何気ない仕草が色っぽい女性です。

江戸時代も現在も「小股の切れ上がったいい女」は「自分の好みの女性」をさします。すべての条件が満たされる女性が現れた時にはもちろん、人によっては一つでも条件を満たした女性に対しても「小股の切れ上がったいい女」を使います。

大げさな表現を嫌い、照れ屋の江戸っ子らしく「自分の好みの女性」を表現した江戸庶民の言葉が、「小股の切れ上がったいい女」です。

江戸っ子の使う「小」には江戸っ子言葉特有の意味があります。江戸っ子言葉の「小(こ)」は「少し・ちょっと」の他に「すごく・とても」という意味でも使われます。

例えば、部屋に招かれたとき、「とても綺麗な部屋だね」と素直にほめずに「小綺麗(こぎれい)にしてるじゃねぇか」と言います。

「小股の切れ上がったいい女」は簡単にいうと『すごく魅力的な女性』のことです。

まとめ

「小股の切れ上がったいい女」は人によって、時代によって、変化します。

これといった定義がないので、江戸時代の江戸っ子言葉「小股の切れ上がったいい女」は現在に残りました。

「小股」の解釈には諸説あり、正解を断定することはできません。

女性の躰の部分という説、単に「股」という説、動作・仕草という説があります。

躰の部分という説には、「うなじ」や「切れ長の目」という「股」からは想像できない躰の部分の説まであります。

江戸時代も現在も女性の好みは人によって違います。「うなじ」に惹かれる人もいるし、「足首」に惹かれる人もいます。スタイルに惹かれる人もいるし、身体には一切惹かれず、凛とした態度に惹かれる人もいます。

「小股の切れ上がったいい女」は「すごく魅力的な女性」で『これ以上ないくらいの自分好みの女性』ということです。

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