「腕が鳴る(なる)」は中学入試でも頻繁に出題され、「教員採用試験 一般教養」にとりあげられるほど、日常的に使われる慣用句です。
腕が鳴る(なる)とは「腕前を発揮したくてむずむずする」「技能や力を発揮したくてじっとしていられない」という意味です。
意味と語源
腕(うで)には、肩から手首まで(手の部分も含める)の身体の部分「arm」の他に、物事をする能力・技量「skill」という意味もあります。
「腕が鳴る」とは「腕前を発揮したくてむずむずする」「技能や力を発揮したくてじっとしていられない」という意味です。「腕や手の関節がポキポキ鳴る」「腕や手の関節をポキポキ鳴らす」ことではありません。
「腕が鳴る」は、「技量」を意味する『腕』と「名声などが広く世間にしれわたる」ことを意味する『鳴る』の二つの語で構成された慣用句です。
技量の優れたことを「上手」、技量のつたないことを「下手」というように、古くから日本では「手」を「わざ・技量」という意味で使っていました。いつしか手と腕は同じような意味で使われるようになります。
「腕がいい」「腕がある」はいずれも「技術・技量が優れている」ことを意味するように、「腕」には「物事をする能力・技量」という意味もあります。
技量(腕)を「広く世間にしらしめたい」と鳴く(声をあげる)様子を表すことばとして「腕が鳴る」は使われるようになり、「技能や力を発揮したくてじっとしていられない」という意味の慣用句とて定着したと考えられます。
正しい使い方
二つ以上の語で構成され、特別な意味をもったことばを慣用句といいます。慣用句は日常的によく聞いたり使ったりします。誤った使い方をすると、自身の評価を下げることにもなるので注意をして使用しましょう。
用例
1・ 明日は本番。腕が鳴るね
2・ 次はラスボスが相手だ。腕が鳴るぜ
3・ 迷宮入り事件が多いから、腕が鳴るのだ。(古代史は知的冒険/関裕二著より)
4・ 久しぶりのタイトル戦に腕が鳴るも、ひとつ困ったことがあった。(棋士米長邦雄名言集 人生に勝つために/伊藤能著より)
5・ 節約の腕が鳴る一年間になりそう。(2018年版 大人の動物占いPREMIUM/主婦の友社編集より)
腕が鳴るを英語でいうと
日本語の慣用句にぴったり当てはまる英語はありません。意味は通じるけど、慣用句がもつ特別なニュアンスを英語で表現するのは難しいようです。
「腕が鳴る」をあえて英語にすると次のようになります。
1・ I can hardly wait ~
意味:「待てなくてうずうずする」「早くしたくてたまらない」
用例:I can hardly wait to beat him! 「早く対戦相手を打ち負かしたくてうずうずする」=「対戦相手が強いので腕がなる」
2・ (be)itching to ~
意味:「すぐに~したくてたまらない」
用例:I’m itching to play against that storong opponent! 「強敵と対戦したくてたまらない」=「対戦相手が強いので腕がなる」
どちらも「早くしたくてたまらない」という雰囲気はよく伝わりますが、「腕」のもつ特別なことばの雰囲気が表現されていませんね。
まとめ
日常的に使われる慣用句を、誤った意味で用いたると、自身の評価を下げることになります。
「腕が鳴る」のほか「腕」を用いた慣用句には、「腕が上がる」「腕に覚えがある」があります。
「腕が鳴る」の意味:腕前を発揮したくてむずむずする。
「腕が上がる」の意味:習得した技術が上達すること。(酒の量が増えるという意味で使われることもあります)
「腕に覚えがある」の意味:十分に経験を積んでいるので、自分の持っている能力に自信があること。
腕を用いた慣用句を上手に使いこなして、「粋(いき)な人」って言われたいですね。