北海道の秋の恒例行事「観楓会」とは?いつ・どこで・何をするのか?

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観楓会(かんぷうかい)は、古くから道民のあいだで、秋に行われる行事です。観楓会は、おもに職場・町内会などの組織で、秋に行われる「1泊宴会付き温泉旅行」です。

当初、観楓会は、仲間うちで「美しい紅葉を楽しみ」つつ宴会をすることで親睦を深める目的で行われていましたが、じょじょに観楓会の「美しい紅葉を楽しむ」という目的が薄れて、「宴会を楽しむ」1泊の温泉旅行へと変化しました。

観楓会は、ほとんどの辞書に載っていません。観楓会は北海道独特の「秋の慰安旅行」で、「1泊宴会付き温泉旅行」です。

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観楓会(かんぷうかい)とは

観楓会は、9月中旬~10月末ころに行われる、北海道独特の「秋の慰安旅行」で、1泊宴会付き温泉旅行です。

観楓会(かんぷうかい)は、明治中期ごろには北海道全域に広がり、そのころ日本領だった樺太でも「観楓会」が行われていました。(参考:北海道博物館Newsletter)

当時の観楓会は、日帰りで、同じ地域に住む人々が、ご馳走とお酒を持ち寄り、「美しい紅葉を楽しみ」つつ宴会をし、親睦を深めていたと考えられています。春の「花見」、秋の「観楓」、娯楽の少なかった当時は、移りゆく自然の美しさを肴に、人々が集い親睦を深めていたようです。

北海道のほぼ全域に鉄道網が張り巡らされた大正後期頃になると、「観楓会」は秋の宴会付き旅行という色合いが強くなります。

その後、戦争の影響で下火になった観楓会は、昭和30年代頃から、じょじょに勢いをとりもどし、昭和40年代後半には1泊宴会付き温泉旅行が主流となります。このころから観楓会は「美しい紅葉を楽しむ」というより、「宴会を楽しむ」慰安旅行として北海道の全域で行われるようになります。

昭和末期の観楓会

昭和60年代、私が勤めていた札幌の会社では、「観楓会」が毎年恒例の一大行事でした。費用は会社がもち、参加は自由がたてまえ(実際は、ほとんど強制的に参加)でした。

幹事になると、バスをチャーターし、観光地を巡るルートを考え、昼食を用意し、移動中の飲み物やつまみを用意し、予算に合ったホテルの観楓会プラン(飲み放題プラン)を予約します。

当時は、北海道のほとんどの会社で同時期(9月中旬から10月末)に1泊の「観楓会」を行うため、格安のバスの予約、人気のある温泉ホテルの観楓会プランの予約をとるため、2ヶ月くらい前から準備が必要でした。

朝9時会社前出発、同時にバスの中では「お酒」が振る舞われます。最初の観光地について昼食をとる時には、やく半数が酔っ払いです。酔っ払いのほとんどは観光地を楽しむことなくバス内で飲み続けます。

昼食後バスが出発すると、ほとんどの人が寝てしまいます。午後から訪れる観光地では、酔っ払いはバスの中で寝続けるか飲み続けます。*毎年、こうなるので、午後から訪れる観光地は女性社員の意見で決定されます*

ホテルに到着すると、宴会がはじまるまで、各自、自由行動になります。ほとんどの人は、この時間に温泉につかり、バス移動の疲れをとります。なかには、宴会まで寝続ける人、飲み続ける人もいます。

私のいた会社では、余興がなかったので、上司と軽く社交辞令を交わしたあと、気の合う人と、ひたすら飲み続けます。宴会後は各部屋に、部屋ごとに希望の「飲料」が用意されています。ほとんどの人は酔いつぶれてねむるまで飲み続けます。

翌日、朝食をとり、ホテルを出発、昼食前に会社前に到着、解散。帰りのバス内で飲み続け、バス到着後に飲みに行く強者もいました。

これが、私の知っている昭和末期の職場で行われていた「観楓会」のオーソドックスなスタイルです。

平成の観楓会

平成初期ころまでは、ほとんどの会社で以前同様の「観楓会」が行われていました。

その後、観楓会の規模はじょじょに小さくなり、平成中期ころになると、職場の観楓会は、1泊宴会付き温泉旅行から、ちょっとだけ豪勢な宴会へと様変わりしていきます。

現在、私の務める会社では、1泊の慰安旅行「観楓会」は行われていません。観楓会と称して、ちょっと豪勢な「宴会」を行っていますが、私は参加していません。

職場での「観楓会」は縮小傾向にありますが、現在でも町内会や老人クラブなどでは、1泊宴会付き温泉旅行が主流です。ちなみに、私の実家のある町内会と老人クラブでは、昭和50年以降、毎年かかすことなく、1泊宴会付き温泉旅行の「観楓会」が行われています。

私の知人の会社では、昨年、数年ぶりに1泊宴会付き温泉旅行の「観楓会」を復活させました。

かつての「観楓会」のようにひたすら飲み続けるのではなく、お酒を飲むのは宴会以後とし、旭岳のロープウェイにのり、紅葉を楽しむ観光メインの行程にしたところ、好評だったといいます。

今年、元号が新しくなります。

職場の「観楓会」が、1泊宴会付き温泉旅行として、かつての勢いを取り戻す日も、そう遠くないのかも知れません。

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まとめ

北海道で生まれ育った私にとって、「観楓会」はとても身近な行事でした。とうぜん、日本全国どこでも秋になると「観楓会」が行われていると思っていました。

私が、観楓会が北海道独特の行事だと知ったのはつい最近のことです。

気になって「観楓会」を辞書で調べましたが、「観楓会」が載っていたのは「大辞林」だけで、意味は[紅葉を観賞するため、客を招いて催す会]、私の知っている「観楓会」とは、だいぶ様子が違います。

道民が「観楓会」と聞いて、あたまに思い浮かべるのは、1泊宴会付き温泉旅行です。

子供のころ、町内会の「観楓会」に参加し、水族館に行って、温泉でご馳走を食べて、子供同士ではしゃぎ、とても楽しかった思い出があります。

働くようになって、会社の「観楓会」に参加したときは、どこに行ったかも憶えてないくらい、飲み続けた思い出があります。

春の「花見」は親しい友人と行いますが、秋の「観楓会」は親しい友人と行ったことがありません。おそらく全ての道民は「観楓会」を親しい友人と行いません。

なぜ、友人と「観楓会」をしないのか?誰に聞いても、何を調べても不明です。

観楓会は、会社や町内で、あまり親しくない人と親睦を深めるために行う、シャイ(shy)な道民が考え出した、北海道独特の行事なのかも知れません。

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