はんかくさいの意味とは?北海道弁の歴史と道民がよく使う北海道弁

北海道弁-はんかくさい 地方・風習・方言

北海道の方言(北海道弁)は、海岸地方と内陸部で、様相が異なります。

海岸地方の北海道弁は、東北地方や北陸地方の漁民や、近江商人をはじめとする関西系商人らの言葉が混じり合って生まれました。

内陸部の北海道弁は、開拓のため本州各地から入植した人々の言葉と、海岸地方の北海道弁が混じり合って生まれました。

「はんかくさい」は、いつどこで生まれた言葉か定かではありませんが、北海道に伝わった「はんかくさい」のルーツは近江商人の言葉で、はじめ北海道の海岸地方に伝わり、内陸部に広まった言葉です。

「はんかくさい」は現在、北海道と東北地方の方言のように捉えられていますが、かつては近畿地方で多く使われていた言葉で、辞書にも載っている語です。

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はんかくさいの意味と使い方

北海道の人は「はんかくさい」という言葉を【おろかである・ばからしい・おかしな(変な)】という意味で使います。

語源となっているのは「半可臭い(はんかくさい)」です。「半可臭い」は辞書にも載っている語です。

「半可臭い」の意味は、【おろかである・ばからしい】で、北海道弁の「はんかくさい」と同じです。

オヤジの会話にみる「はんかくさい」の使い方

A:「いやー、わやだ」(いやー、むちゃくちゃだ)

B:「なした?」(どうしたの?)

A:「正月に帰省したんだけど、水おとしするの忘れてさ」(正月に帰省したんだけど、水道管の水抜きするのわすれてさ)

B:「正月なまらしばれたから、水道しばれたべ」(正月すごく冷え込んだから、水道管が凍結したんじゃない)

A:「水道管とかすのに2万円もとられたさ」(水道管の解凍修理に2万円もとられた)

B:「はんかくせー」(ばかだねぇー)

親子の会話にみる「はんかくさい」の使い方

親:「どこちょしてるの?」(どこさわってるの?)

子:「ちんちんが、もちょこいんだもん」(ちんちんが、くすぐったいんだもん)

親:「はんかくさいことしないで!」(変なことしないで!)

「はんかくさい」は相手をバカにしたり、罵ったりするときに使います。

「はんかくさい」はどこから北海道に伝わったか?

はんかくさいは、北前船によって北海道によって伝わったという説(北前船説)が有力です。

北前船とは、大阪と北海道を日本海まわりで往復していた帆船です。江戸時代は大阪と北海道を1往復すると、千両もの利益を得ることができました。

北前船が誕生する前、北海道との取引は近江商人が独占していました。

近江商人に雇われていた北陸の船頭たちは「同じことをやれば自分たちも大儲けできる」と思い立ち、自前の船を持ち、近江商人以外の江差や函館の商人と取引し、大阪の問屋と直接取引します。これが北前船です。

「はんかくさい」は、石川県の一部(能登・小松・加賀の一部)で【おろかだ・ばからしい】の意味で現在も使われています。

かつて近畿地方で生まれた「はんかくさい」が、近江商人によって北陸地方に伝わり、北前船によって東北地方・北海道に伝わったというのが北前船説です。

「はんかくさい」が本当に近畿地方で生まれた言葉なら、北前船誕生前から北海道(松前)と取引していた近江商人によって、「はんかくさい」は北海道に伝わっていたと考えらるのですが・・・。

「はんかくさい」という言葉が、北前船誕生後に生まれたのなら、北前船説が正しいことになりますが、「はんかくさい」がいつどこで生まれた言葉なのかは定かでありません。

いずれにしても北海道に伝わった「はんかくさい」は、近江商人が使っていた言葉です。

どこの誰が北海道に伝えたかは定かではありませんが、「はんかくさい」は最初に北海道南部の海岸地域に伝わり、その後北海道の内陸部、北海道全体に広まった北海道弁です。

北海道弁の歴史

北海道弁は、海岸地方と内陸部で、様相が異なります。

北海道は元来、アイヌの島でした。和人といわれる人が北海道に定住するようになり、北海道の言語は大きく変化します。

700年ほど前から、青森、岩手、秋田、山形の人々が北海道南部の海岸地域で漁業を営み生活を始めます。その後、北海道の豊かな海の幸をもとめて東北地方をはじめ北陸地方から多くの人々が渡道し、北海道南部の海岸地域で漁業を営み生活をするようになります。

北海道の漁業が盛んになると、漁民に必要な食糧や衣類を売り、北海道の海産物を大阪で売る近江商人が、北海道の海岸地域を訪れるようになります。

東北地方の人々、北陸地方の人々、近畿地方の人々の交流により、それぞれの地方の方言が接触し、北海道南部の海岸地域の北海道弁は生まれます。

北海道南部の海岸地域で生まれた北海道弁は、新しい漁場をもとめた漁民によって、北海道の多くの海岸地域に伝わり普及します。

北海道の海岸地方で使われる北海道弁は、東北地方、北陸地方、近畿地方の方言がルーツです。

北海道内陸部の開発は100年前ほど前、明治政府発足後にはじまります。

廃藩置県、藩籍奉還によって禄を失った士族など、日本各地から多くの人が入植し、内陸部の開拓は行われます。入植者のほとんどは、単独で渡道せずに、一族同志誘い合って数十戸の集団で渡道しました。

同郷の移植者の団結力は非常に強く、それぞれ山口団体、越中団体、広島部落、香川部落と自称して、それぞれ郷里の習俗を守り、郷里の方言を使っていました。

明治中期になり鉄道が敷設されると、ほかの団体や海岸地方との交流がはじまり、方言が接触し、北海道の内陸部の北海道弁は生まれます。

北海道内陸部で使われる北海道弁は、山口県、新潟県、広島県、香川県の方言と海岸地方の北海道弁がルーツです。

北海道弁が生まれた一方で、本州との交流が盛んになると、東京語を基準とした共通語が北海道に伝わります。

共通語は、内陸部の札幌、旭川、帯広、北見に浸透し、徐々にその周辺の地域に浸透します。その後共通語は、学校における標準語教育によって、海岸地方を含む北海道全体に浸透します。

現在の北海道で話される言葉は、標準語に非常に近いと言われ、北海道弁を使う人の数は減っています。

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道民がよく使う北海道弁

北海道の人は標準語に近い言葉を話すと言われていますが、けっこうな頻度で北海道弁を使っています、方言だと気づかずに・・・。

北海道で生活していて、よく耳にする北海道弁、道民がよく使う北海道弁です。

・あずましい : 意味「居心地が良い・落ち着く」 北海道のほか、青森県で使われています。

・あめる : 意味「腐る」  北海道のほか、三重県の一部や青森県・岩手県など東北地方で使われています。

・おんちゃん : 意味「弟」  四国地方や、東北地方の一部では「おじさん」の意味で使われています。

・かっちゃく : 意味「ひっかく・かきむしる」 北海道以外では、宮城県で使われています。青森県・茨城県では「かっちゃぐ」。

・げっぱ : 意味「最下位・ビリ」  北海道のほか、秋田県や青森県の一部で使われています。

・こわい : 意味「疲れた・体が辛い・息苦しい」 北海道のほか茨城県や北陸地方の一部で同じ意味で使われています。

・しゃっこい : 意味「冷たい」 北海道のほか、青森県や東北地方の一部で使われています。 

・ちょす : 意味「いじる・触る・からかう」 北海道のほか、青森県など東北地方の一部で使われています。

・とうきび : 意味「とうもろこし」 北海道のほか、東北・四国・九州の一部で使われています。

・なげる : 意味「捨てる」 北海道では、ゴミをなげると言います。北海道のほか、東北南部の一部の地域で同じ使い方をします。

・ばくる : 意味「交換する」 北海道のほか、東北六県の一部で使われています。

・もちょこい : 意味「くすぐったい」 北海道のほか、青森県など東北地方の一部で使われています。

・ゆるくない : 意味「容易でない・楽でない」 北海道のほか、青森県など東北地方の一部で使われています。

・わや : 意味「むちゃくちゃ」 北海道のほか、大阪など関西の一部地域で使われています。

北海道弁は、日本各地の方言の影響を受けています。多くは東北地方の方言の影響を受けていますが、「こわい」のように北陸地方・西関東の影響を受けた言葉や、「わや」のように関西地方の影響を受けた言葉もあります。

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まとめ

道産子の私は、「こわい」「なげる」「ばくる」を標準語だと思って使っていました。

関東で働くようになり、会社のあるビルの階段を駆け上がり、何気なく「あぁー、こわい」って言って、同僚達をドン引きさせました。

同僚達は「なにかいるのか?」とか「お前、霊感つよいのか?」とか、聞いてくるしまつ。北海道弁の解説をし、みんなに納得してもらいましたが、「こわい」が通用しなかったことはショックでした。

珍しい海外のタバコを吸っている同僚がいたので、「一本ばくるべ」と言ったら、ポカーンとして「ばくるって何?なんか盗む気?」って聞かれ、これまたショック。北海道弁の解説をし、「ばくる」と「パクる」の違いを説明するのに一苦労しました。

自分のデスクまわりのゴミを捨てる場所がわからず先輩に「ゴミ、どこになげればいいんですか?」って聞くと、事務所中から「ゴミは投げちゃダメ!」とか「お前は、アホか?」みたいな罵声をあびせられるしまつ。

北海道弁の「なげる」の解説をし、理解してもらいました。それからしばらくの間、私のいた事務所の中では、みんな「なげる」を気に入ったみたいでみんなが多用し、「なげる」がちょっとしたブームになった時は、ちょっと嬉しかったです。

ひとつの地域に暮らしていると、使っている言葉が、方言なのか標準語なのかなんて意識しません。それで良いんだと思います。標準語を知ることは大切ですが、自分の生まれ育った地域の言葉(方言)を、意識せずに使い続けることは、もっと大切なことのように思います。

最近は、おかしな北海道弁を使う道外の人もいます。北海道弁を使うなら一度北海道に住んでみて、ちゃんとした北海道弁を体感してから使って欲しいですね。

北海道は「なまら、あずましい」私のふるさとです。

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