てやんでい!べらぼうめ!の意味と語源とは

てやんでい 地方・風習・方言

生粋の江戸っ子は早口で発音の勢いが強い。べらんめぇ調の「下町ことば」は、粋でいなせな江戸っ子の言葉です。

気の短い江戸っ子は、言葉をはしょったり、江戸っ子風に言葉を変化させる癖があります。「てやんでい」は「何言ってやがるんだ」をはしょって、語尾の「だ」を江戸っ子風に「でい(でぇ)」に変化させた下町ことばです。

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てやんでい!べらぼうめ!の意味と語源

「てやんでい!べらぼうめ!」は、相手を罵る(ののしる)時に江戸っ子がよく口にする言葉です。

語気は強いけど「何言ってんだよ。ばかだなぁ(笑)」ていどの意味で使われます。

「てやんでい」は気の短い江戸っ子が「何言ってやがるんだ」をはしょった言葉です。

「何言ってやがるんだ」から語頭の「何言っ」と語中の「がる」をはしょって「てやんだ」に、「てやんだ」の語尾を江戸っ子風に変化させて「てやんでい(てやんでぇ)」になったと考えられます。

江戸っ子は早口でつんのめるように話すので、「てやんでい」は「てやんでぇ」にも聞こえます。

「べらぼう」は江戸時代の見世物小屋で人気だった奇人の名前「便乱坊(可坊)」が語源という説があります。

「便乱坊(べらんぼう)・可坊(べくぼう)」は、非常に容貌が醜く、愚鈍な仕草で客を笑わせていました。

そんな「便乱坊」の様子から、「べらんぼう」は「バカ・アホ」の意味で使われ始めたという説と、「べらぼう」は穀物をつぶすヘラの「へら棒」が語源で、「穀潰し(ごくつぶし)」の意味で使われはじめたという説があります。

『江戸語辞典(東京堂出版・1991年)』には、当たり前という意味で使われる江戸ことば「あたぼうよ」は、「あたりまえよ、べらぼうめ」の略とあります。

下町ことばの特徴である「早口で巻き舌の威勢のよい言葉つき」を「べらんめぇ」といいます。「べらんめぇ」は「べらぼうめ」のくずれた言い方で、「べらぼうめ」と同様に人を罵るときにも使います。

江戸っ子は「ひ」と「し」の区別がつかない

江戸っ子は「潮干狩り(しおひがり)」を「ひおしがり」と言ったり、「お彼岸(おひがん)」を「おしがん」と言ったり、「おひたし」を「おしたし」と言ったりします。

「ひ」と「し」の区別がつかないのは下町ことばでは当たり前で、生粋の江戸っ子の中には、「さ行」が「た行」になっている方もいます。

「真っ青(まっさお)」を「まっつぁお」、「真っ白(まっしろ)」を「まっちろ」、「真っ直ぐ(まっすぐ)」を「まっつぐ」と言います。

「ひ」が「し」になったり、「さ行」が「た行」になっているのは、何を言おうとしてるのか、聞いていて何となくわかるけど、「い」「や」「ゆ」「え」がなまって混在してる下町ことばは、ちょっと何を言ってるのか分かりません。

「芝居(しばい)」を「しばや」と言い、「眉毛(まゆげ)」を「まみえ」と言い、「茹でる(ゆでる)」を「うでる」と言います。現在は「しばや」や「まみえ」を使う人はほとんどいないようです。

「てやんでい」のように、言葉をはしょったり、言葉を変化させて、使っている下町ことばは他にもあります。

「するってぇと」は「そうすると・そうするというと」を江戸っ子風に、はしょった下町ことばです。

「てえへんだ」は「大変だ(たいへんだ)」の語頭が変化し、「あすび」は「遊び(あそび)」の語中が変化し、「でねぇ」は「出ない(でない)」の語尾が変化した下町ことばです。

てれやな江戸っ子の小(こ)

「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し、口先ばかりではらわたなし」

江戸っ子は威勢良くポンポンと荒い言葉を使う人が多いけど、心の中はさっぱりとしていて、裏で悪いことを言ったり、悪だくみをする人はいないと言われています。

粋(いき)でいなせを身上としている江戸っ子は、てれやで素直に人をほめたりお世辞をいうことが苦手で、他人を気遣う人情深い人と言われています。

江戸っ子は大げさな表現にならないように、言葉の最初に「小(こ)」を付けた言葉を使います。

整理整頓が行き届いた清潔な部屋を「きれいな部屋だな」と素直にほめずに「小ぎれいな部屋だな」と言います。逆に足の踏み場もないような汚い部屋を「きったない部屋だな」とストレートには言わずに「小ぎたない部屋だな」と言います。

やたら粋な振る舞いを「小粋」と言い、すんごく恥ずかしいを「小っ恥ずかしい」と言います。

「すっごい・すっごく」の代わりに、逆の「ちょっと・少し」を意味する「小」を使った言葉は、てれやで優しい江戸っ子を象徴する下町ことばです。

江戸っ子は質屋を「七ツ屋」、質入れすることを「曲げる」と言っていた
江戸時代の質屋は下層民の生活資金を支える重要な金融機関でした。 当時の質草(しちぐさ/質屋の担保)は、衣類、装身具、家具などの生活用品で、生活資金を一時的に手に入れるために質屋は利用されていました。 女房を質に入れても初鰹(はつがつお)。粋

まとめ

江戸っ子は早口で勢いよくつんのめるように話します。

「ひ」と「し」の違いなんて気にしないし、言葉だって江戸っ子風に粋に変化させます。

「てやんでい(てやんでぇ)」は気の短い江戸っ子が、「何言ってやがるんだ」をはしょって、語尾を江戸っ子風に変化させた言葉です。

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「べらぼうめ」は人を罵る(ののしる)ときに江戸っ子が使う言葉です。

「てやんでい!べらぼうめ!」は言葉の勢いが強いけど、「何言ってんだ、ばかだなぁ(笑)」ていどの意味で使われます。

粋でいなせを身上としている江戸っ子は、愛情のうらはらに、荒っぽい言葉を使います。あらっぽい言葉は使うけど、心の中はさっぱりしていて悪意がない、そんな江戸っ子の言葉は多くの人に愛されています。

「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し、口先ばかりではらわたなし」

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