的を得るの意味は?的を射るとどう違うの?

的を得る 言葉

「的(まと)を得(え)る」と「的(まと)を射(い)る」は、どちらも「うまく要点をつかむ・的確に要点をとらえる」という意味で使われる正しい慣用句です。

かつて「的を得る」は、「的を射る」あるいは「当(とう)を得る」の誤用(誤った使い方)とされていました。現在でも「的を得る」は誤用という風潮があり、「的を得る」は正用という語釈が根付くには時間がかかりそうです。

チャレンジ小学国語辞典・第6版では的を射るの語釈に『「的を得る」と言わないよう注意』と載っている一方で、三省堂国語辞典・第7版には「的を得る」「的を射る」両方の語釈が載っています。

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的を得ると的を射るの違い

現在は「的を得る」「的を射る」どちらも「うまく要点をつかむ・的確に要点をとらえる」という意味で使われる正しい慣用句です。

意味は同じですが、かつて「的を得る」は誤用とされていたので、スピーチやテレビなどのメディアでは「的を射る」を使い、「的を得る」は使いません。

日常生活では、「的を射る」を使う人がわずかに「的を得る」を使う人より多いようです。

文化庁が発表した「国語に関する世論調査」

2003年度の調査結果

「的を得る」を使う人 : 54.3%
「的を射る」を使う人 : 38.8%

20013年度の調査結果

「的を得る」を使う人 : 40.8%
「的を射る」を使う人 : 52.4%

文化庁は慣用句の誤用が目立つことについて「言葉は時代により変化するため、間違いとは言い切れない」としたうえで「認識のずれがコミュニケーションに支障をきたす恐れがあり注意が必要だ」と指摘しています。

小学生向けの国語辞典では、「的を得る」を誤用としているものが圧倒的に多く、「的を得る」は正用という語釈が根付くには時間がかかりそうです。

「的を得る」を誤用としてない国語辞典 : 三省堂 例解小学国語辞典第6版

「的を得る」を誤用としている国語辞典 : ベネッセチャレンジ小学国語辞典第6版・小学館 例解学習国語辞典第10版・学研出版 新レインボー小学国語辞典改訂第4版

現在は「的を射る」を使う人が52.4%とわずかですが半数を超えていて、小学校の辞書では『「的を得る」は誤用』としているものが圧倒的に多いので、公の場では「的を射る」を使うのが無難です。

正鵠(せいこく)を得る・射る

「的を得る」「的を射る」と同じ意味で使われる慣用句に、「正鵠を得る」「正鵠を射る」があります。

正鵠(せいこく)は、「①弓の的の中心にある黒点②物事の急所・要点。ねらいどころ」という意味で、正鵠は慣用読みで「せいこう」とも読みます。

正鵠を得る・正鵠を射るの語釈は、「物事の急所・要点を正しくおさえる」です。正鵠を得る・正鵠を射るは、「的確に要点をとらえる」という意味で「的を得る・的を射る」と同じ使われ方をします。

かつては「的を射る」を使わず「正鵠を得る」を多用していましたが、現在は「正鵠を得る・正鵠を射る」を使うことはほとんどありません。

「物事の要点をおさえる・とらえる」という意味の慣用句の始まりは「正鵠を得る」で、明治期に使われていたと考えられます。

昭和初期(1930年頃)になると、「正鵠を射る」が使われはじめ、昭和21年(1946年)頃から「的を射る」が使われはじめ、「正鵠を得る・正鵠を射る」はほとんど使われなくなりました。

平成25年(2013年)『三省堂国語辞典』第7版で、従来「誤用」とされてた「的を得る」を正用としました。現在は「的を得る」より、「的を射る」を使う人が多く、スピーチやテレビなどのメディアでは「的を射る」を用います。

「◆的を得る」は「的を射る」の誤り、と従来書いていたけど、撤回し、お詫び申し上げます。

飯間浩明氏のツイートより一部引用(飯間浩明氏:国語辞典編纂者・『三省堂国語辞典』編集員)

言葉は時代により変化するので、未来の国語辞典すべてに「的を得る」の語釈が載っているかも知れませんね。

当(とう)を得る

『大辞林 第3版:三省堂』 で「的を射る」とひくと

的確に要点をとらえる「-・いた質問」〔「的を得る」は「当を得る」と混同した誤り〕

と記してあります。

かつて「的を得る」は「当を得る」と混同した誤りとされていました。

当を得るは、「道理にかなっている」という意味の慣用句です。的を得るは、「物事の要点をおさえる・とらえる」という意味の慣用句です。

「道理」の意味は、①物事がそうあるべきすじみち。ことわり。わけ。②人の行うべき正しい道。です。

「的を得た(射た)質問」に対する答えが「当を得た答え」になります。

まとめ

言葉は時代によって変化するので、かつては誤用とされていた「的を得る」が「的を射る」と同じ意味をもつ慣用句として認められたのも当然のことかも知れません。

「的を得る」が誤用とされていた2003年には、誤用の「的を得る」を使う人が54.3%で、正用の「的を射る」を使う人38.8%より多くいました。

半数以上の人が「的を得る」を正しい日本語と思って使っていたので、「的を得る」を再検証したことは、まさしく「当を得た行動」でした。

2013年に三省堂が、「的を得る」を誤用ではないとして、『三省堂国語辞典』第7版に語釈を載せたことで、「的を得る」は「的を射る」と同じ意味をもつ慣用句として認められました。

現在はスピーチやメディアでは使われていない「的を得る」ですが、近い将来「的を射る」に変わって使われることになるかも知れません。

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