さつま揚げ・天ぷら・つけ揚げ・あずま揚げなど地域によって異なる呼び名の揚げ蒲鉾~さつま揚げ・天ぷらのルーツとは

さつま揚げ島津斉彬 地方・風習・方言

「さつま揚げ」は、魚のすり身を油で揚げたもの「揚げ蒲鉾(あげかまぼこ)」の総称です。

揚げ蒲鉾は東日本では「さつま揚げ」と呼ぶ人が多く、西日本では「天ぷら」と呼ぶ人が多くいますが、例外の呼び名も多々あります。

東日本でも北海道や青森県では「天ぷら」と呼ぶ人が多く、愛知県や岐阜県では「はんぺん」と呼ぶ人が多く、西日本でも「さつま揚げの本場」鹿児島県では「さつま揚げ」と呼ばずに「つけあげ」と呼ぶ人が多くいます。

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「さつま揚げ」のルーツ

蒲鉾(かまぼこ)の名前の由来には諸説ありますが、日本書紀に登場する神功皇后(じんぐうこうごう)が、地方征伐の途中で「すりつぶした魚肉を、鉾(ほこ)の先に付けて、焼いて食べていた食べ物の形が、蒲(がま)に似ていたこと」から「蒲鉾」と呼ばれるようになったという説が有力です。

魚のすり身が、茹でられるようになったのは室町時代、蒸されるようになったのは江戸時代、油で揚げられるようになり「さつま揚げ」が広く知れ渡ったのは、菜種油が普及した江戸時代後期以降と考えられています。

さつま揚げのルーツは、沖縄料理の「ちきあぎ」と言われています。

江戸時代、鹿児島藩28代当主島津斉彬(しまずなりあきら)公の時代に、琉球(現在の沖縄)との交易を通じて、「ちきあぎ」と言われる魚のすり身を丸めて素揚げしたものが、薩摩(現在の鹿児島県)に伝わります。

「ちきあぎ」は音変化し鹿児島の方言的な言い方「つけあげ」になります。【「つけあげ」は串木野(現在の鹿児島県いちき串木野市)が日本での発祥の地と言われています。】

薩摩(さつま)で生まれた「薩摩のつけあげ」は、江戸に伝わり粋な江戸っ子によって言葉が略され「さつま揚げ」と呼ばれるようになります。

東日本で「揚げ蒲鉾」を「さつま揚げ」と呼ぶ地域が多いのは、江戸から「さつま揚げ」が、東日本に広まったためと考えられます。

鹿児島県で、「さつま揚げ」と呼ばないのは、薩摩の「つけあげ」が江戸に伝わった後に、「さつま揚げ」と呼ばれるようになったためです。

さつま揚げと呼ぶ人が多い都道府県

茨城県:85.7%、栃木県:83.3%、群馬県:75%、埼玉県:55.6%、千葉県:47.6%、東京都:49.9%、神奈川県:59.6%、(Jタウンネット調べ)

「天ぷら」のルーツ

江戸時代、天ぷらは江戸文化圏と上方文化圏で、全く別の食べ物でした。

江戸(現在の東京)の天ぷらは、材料にうどんの粉をまぶして油で揚げたもので、現在とほとんど同じ天ぷらでした。

一方で上方(現在の京都、大阪を中心とした関西地方)の天ぷらは、魚のすり身を、お椀のふたなどで腰高のまんじゅうの形にしたものを、素揚げにしたものでした。

「揚げ蒲鉾」を、江戸時代の上方では「天ぷら」と呼んでいたので、西日本では「さつま揚げ」を「天ぷら」と呼ぶ地域が多いと考えられます。

天ぷらと呼ぶ人が多い都道府県

滋賀県:78.3%、京都府:80.7%、大阪府:74%、兵庫県:79.2%、奈良県:83%、和歌山県:81.5%、徳島県:66.7%、香川県:88.9%、愛媛県:75%、高知県:100%(Jタウンネット調べ)

各地の「さつま揚げ」の呼び名

「さつま揚げ」には地域によって様々な呼び名があります。

ここで取りあげる呼び方は、地域独特の通り名です、それぞれの地域には「さつま揚げ」や「天ぷら」と呼ぶ人も多くいます。

かまぼこ  : 北海道の一部

てんかま  : 北海道の一部(てんぷらかまぼこの略)

はんぺん  : 北海道の一部・広島県の一部・岐阜県の一部 (揚げはんぺん・あげはんと呼ぶ地域もあります)

あげかまぼこ: 宮城県(宮城県塩釜市は「さつま揚げ(揚げ蒲鉾)」の生産量日本一)

あずま揚げ : 新潟県

平てん   : おもに関西の一部(四角形のもの)

あげみ   : 宮崎県の一部(延岡市ほか)

オランダ揚げ: 熊本他一部の地域(野菜の入った揚げ蒲鉾)

つけあげ  : 鹿児島県(鹿児島県は「さつま揚げ(揚げ蒲鉾)」の消費量日本一)

つきあげ  : 鹿児島県の一部(屋久島ほか)

ちっきゃげ : 鹿児島県の一部(つけあげ、つきあげの方言的な言い方)

ちきあぎ  : 沖縄県

各地の名物「さつま揚げ」

白天(しろてん): 【大阪府 おもに大阪市】

揚げ色をつけない白い揚げ蒲鉾です。グチ・ハモ・スケソウダラ等を使用し、白く仕上げるために砂糖やミリンを加えていないので、さっぱりとした味わいです。昆布やキクラゲの入った「白天」もあります。

骨天(ほねてん): 【和歌山県 有田市】 「ほねく」とも呼ばれる。

地元、辰ケ浜で水揚げされたタチウオを骨ごと砕いてすり身にして揚げたものです。タチウオの他に、アジ・タイの稚魚など旬の魚も入れます。骨や皮も使っているので、しっかりとした噛みごたえが特徴の揚げ蒲鉾です。

じゃこ天    : 【愛媛県 宇和島市】 「皮天ぷら」とも呼ばれる。

ホタルジャコ(ハランボ)の、頭と内臓以外を全てすり身にして揚げたものです。骨や皮が入っているので、カルシウムたっぷりで、しっかりとした噛みごたえが特徴の揚げ蒲鉾です。

飫肥天(おびてん): 【宮崎県 日南市】

江戸時代から伝わる飫肥地区の伝統的な特産品です。近海でとれるイワシ・アジ・シイラ・サバ・トビウオ等のすり身に豆腐を加えて揚げたものです。味噌・醤油・黒砂糖で味付けされているので、少し甘めの揚げ蒲鉾です。

まとめ

魚のすり身料理は、日本では古くから食べられていて、その料理の呼び方も各々の地域で異なりました。そのため「揚げ蒲鉾」には様々な呼び方があります。

江戸時代後期以降の江戸から揚げ蒲鉾は「さつま揚げ」として東日本に広まりました。一方で独自の文化をもつ上方から、揚げ蒲鉾は「天ぷら」として西日本に広まりました。

東日本で「さつま揚げ」と呼ぶ地域が多く、西日本で「天ぷら」と呼ぶ地域が多いのはこのためです。ちなみに東京で食べる「天ぷら」は、日本全国どこでも「天ぷら」です。「さつま揚げ」を「天ぷら」と呼ぶ地域には2種類の「天ぷら」があります。

北海道の札幌圏で生まれ育った私は、野菜の入った揚げ蒲鉾を「さつま揚げ」とよび、魚のすり身だけの揚げ蒲鉾を「かまぼこ」と呼んでいます。同じ道央でも後志出身の友人は、揚げ蒲鉾を総じて「はんぺん」と呼びます。

道東の紋別市出身の私の友人は、野菜の入った揚げ蒲鉾を「天ぷら」と呼び、魚のすり身だけの揚げ蒲鉾を「かまぼこ」と呼びます。同じ道東でも釧路出身の友人は揚げ蒲鉾を総じて「天ぷら」と呼びます。

道南出身の私の友人は揚げ蒲鉾を総じて「てんかま」と呼びます。

私の知る限り北海道だけでも「揚げ蒲鉾」には5種類の呼び方があります。同じ都道府県でも地域や家庭によって様々な呼び名がある「さつま揚げ」、他にも違う呼び方をしている人がいるかも知れませんね。

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