ペトリコールとは?香りの成分とその特徴・プルースト効果との関係

ペトリコール 話題

ペトリコールとは、[長い間日照りが続いたあとの、最初の雨にともなう独特の香り]のことです。

ペトリコールは、ギリシャ語を語源とした、「石のエッセンス」という意味をもつ造語です。ペトリコールは、あくまで匂いの名称であって、特定の物質を指す語ではありません。

雨が降る直前や雨の降り始めに、たちこめる香りがペトリコールです。ペトリコールは、雨が降り地面がぬれると、消えてなくなります。

雨が止んだ後の匂いは、「大地の匂い」と言われます。大地の匂いは、ゲオスミンというカビ臭の原因物質の匂いです。ペトリコールには、「ゲオスミンの匂い」や「オゾンの匂い」も含まれます。

「雨の匂いはカビ臭くて嫌い」という人がいる一方で、「雨の匂いが大好き」「ペトリコールが大好き」という人がいるのは、「プルースト効果」によるためかも知れません。

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ペトリコールとは

ペトリコールは1964年にオーストラリア連邦科学産業研究機構の鉱物学者Isabel Joy BearとR.G.Thomasが「ネイチャー」に発表した論文の中で用いた造語です。

ペトリコールは「石のエッセンス」という意味をもつ造語です。ギリシャ語で石を意味する「ペトラ」と、ギリシャの神々の血管を流れるものを意味する「イコル」を合わせて「ペトリコール」という造語が生まれたと言われています。

論文の中で、ペトリコールは[長い間日照りが続いたあとの、最初の雨にともなう独特の香り]と定義されています。

地中で特定の植物から生じた油が、乾燥している粘土質の土壌や石・岩石の表面に吸着し、雨や湿度によって鉄分と反応することで独特の香り(匂い)を生じます。この香りに自然界の様々な匂いが混じりあった匂いがペトリコールです。

ペトリコールは雨が降り続き、土壌や石・岩石の表面の油が流れてなくなると、消えてなくなります。

ペトリコールの成分

ペトリコールには、「地中で特定の植物が生じる油の香り」のほかに、「大地の匂い(ゲオスミン)」「オゾンの匂い」などが含まれます。

植物が生じる油は、パルチミン酸やステアリン酸などを含み、さわやかな植物のような香りを感じます。

大地の匂い(ゲオスミン)は、カビ臭の原因物質で、地中のバクテリアや、水中の放線菌や藍藻類によって産生されます。雨によって地中から大気に拡散するので、雨が止んだ後に感じることが多くカビ臭いような腐敗した土の匂いがします。

オゾンの匂いは、酸素系漂白剤のような匂いです。とても強く特徴的な匂いで人によって好き嫌いが分かれます。

ペトリコールは、「植物のような爽やかな香り」と「腐敗した土のような匂い」「酸素系漂白剤のような匂い」など自然界の様々な匂いが混じりあった複雑な匂いです。

パルチミン酸は、石鹸やグリースや化粧品などの原料として利用され、ステアリン酸は、石鹸やロウソクの原料として利用されています。

パルチミン酸とステアリン酸の混合物は、ロウソク、軟膏(なんこう)、化粧用クリームなどの原料として広く用いられています。

プルースト効果(現象)

ある特定の匂いを嗅ぐことで、それにまつわる過去の記憶や感情がよみがえることを「プルースト効果」といいます。

感情を揺さぶるのは、五感の中で嗅覚(きゅうかく)がもっとも強いといわれています。

匂いは、感情や本能を支配する大脳辺緑系(だいのうへんえんけい)に直接届いた後に、五感を認識する大脳皮質に向かいます。

嗅覚は匂いを認識する前に本能的な感情を引き起こしている可能性があると考えられています。

ペトリコールが「大好き」という人は、雨の降り始めにとても楽しい思い出がある、ペトリコールが「大嫌い」という人は、雨の降り始めにとても嫌な思い出がある、かも知れません。

2013年には、プルースト効果(現象)により脳の一部が活性化し、健康状態が改善するという研究結果が発表されました。

プルースト効果につながる香りは、快感に関わる前頭眼窩野(ぜんとうがんかや)や記憶に関わる後部帯状回(こうぶたいじょうかい)の働きを活性化させ、炎症をおこす血液中の体内物質を減少させることが確認されています。

最近、認知症と嗅覚低下に深い関係があることが分かってきました。

匂いを感じることは、とても大切なことです。ペトリコールを感じることは、健康状態の改善や認知症の予防にもつながります。

まとめ

ペトリコールには、カビ臭の原因物質であるゲオスミンの匂いや、酸素系漂白剤のようなオゾンの匂いなど自然界の様々な匂いが含まれます。

日陰のペトリコール、日向のペトリコール、都会のペトリコール、田舎のペトリコール、ペトリコールは発生する状況や環境によって、それぞれ異なります。

日当たりの良い公園で感じるペトリコールは好きだけど、日陰の廃墟で感じるペトリコールは嫌いという人がいるのは、ペトリコールに含まれる匂い成分のバランスが違うからです。

同じ、日当たりの良い公園で感じるペトリコールでも、好きな人と嫌いな人がいるのは、プルースト効果によるためかも知れません。

私が暮らしている北海道の某市では、4月中旬まで公園に雪がのこっています。ペトリコールを感じることができるのは、5月中旬くらいからです。

日当たりの良い公園で感じる、年の初めのペトリコールが好きです。この香りを感じると、冬があけたって感じがして、ちょっと楽しい気持ちになります。

残念ながら、私にはペトリコールにまつわる思い出がないようで、プルースト効果は期待できないようです。

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