蜃気楼と陽炎はどう違う?逃げ水や浮島の原理・仕組みなど

話題

蜃気楼とは、上層と下層の空気の温度差によって、光が屈折し進路が変わることで、見たこともないような風景が見える現象です。

陽炎とは、日射や焚き火などによって空気が熱せられ、光が不規則に屈折し、前方の景色がぼやけて見えたり、ゆがんで見える現象です。

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蜃気楼とは

蜃気楼は空気の密度に違いが生じ、光の屈折率が連続的に変化することによって生じる現象です。

冷たい空気の密度は、暖かい空気の密度よりも大きいので、光は温度の異なる空気の境界で屈折します。

温度差が大きくなると、光の屈折も大きくなります。春先から初夏にかけては、冷たい海面上に温度の高い暖かい空気が流れ込むので、蜃気楼が発生しやすい期間です。

暖かい空気と冷たい空気の位置関係によって、「上位蜃気楼」と「下位蜃気楼」の二つのタイプに分けられます。

上位蜃気楼

上層の空気が暖かく、下層の空気が冷たい場合は、光が凸状に進みます。光が凸状に屈折し進むと、実像の上に虚像が反転して見えます。この現象を上位蜃気楼と呼び、一般的に蜃気楼という場合は、このタイプの蜃気楼を指します。

放射冷却現象などにより下層の空気が極端に冷たくなると、上層の空気と下層の空気の温度差が大きくなり、上位蜃気楼が発生します。

普段は何も見えない所に、見たこともないような風景が見えるのは上位蜃気楼による現象です。

上位蜃気楼は、4月から7月までの期間に、限られた場所でしか観測されません。

日本で上位蜃気楼が毎年のように観測される地域は【石狩湾・オホーツク海・苫小牧沖・富山湾・琵琶湖・猪苗代湖】の6地域だけです。他にも多くの観測報告がありますが、継続的に発生しているかは確認できていません。

今年の6月30日には、富山県魚津市でAランクの蜃気楼が発生しました。対岸の新湊大橋が大きく伸びて見えたり、風景が伸びたり、反転して見えました。

下位蜃気楼

上層の空気が冷たく、下層の空気が暖かい場合は、光が凹状に進みます。光が凹状に屈折し進むと、実像の下に虚像が反転して見えます。この現象を下位蜃気楼と呼びます。

アスファルトの道路が日射などによって熱せられ、路面温度と気温の差が大きくなると、遠くの路面に実際にはない水があるように見えます。この現象を「逃げ水」と呼びます。「逃げ水」は、いたるところで、夏によく見られる下位蜃気楼です。

暖かい海面上に冷たい空気がある場合に、遠くの島を見ると、島が海上に浮かんで見えます。この現象を「浮島」「島浮き」と言います。砂漠に見られるオアシスの蜃気楼もこのタイプの下位蜃気楼です。

日本中で見られる現象で、とくに夏に多く見ることができます。

陽炎とは

陽炎は、急に日差しが強くなり、地面付近の空気が熱せられて、空気が上昇する現象です。気候現象以外でも「焚き火」などによっても生じる現象です。

空気は熱せられると、軽くなり上昇するので、地面から空に向かって空気が流れます。熱せられ密度が小さくなった空気は、風などによって不規則に分布します。

不規則に分布した密度の違う空気を光が通過すると、光は不規則に屈折します。

通過する光が不規則に屈折すると、前方の景色がぼやけて見えたり、ゆがんで見えたりします。

気候現象としての陽炎は、春先に起こることが多い現象です。

蜃気楼の歴史

蜃気楼は、その原理が解明される前は、妖怪が起こす不思議な現象として捉えられ、「吉兆」の象徴として好まれていました。

蜃気楼の「蜃」は、海中に住む妖怪で、大ハマグリあるいは蛟(みずち:龍)といわれています。「蜃」が、妖しい「気」を吐き出して、「楼(高い建物)」を出現させると考えられていました。

江戸時代以降の絵画や工芸品には、蜃気楼を題材にしたものが多くあります。浮世絵『春季蜃気楼(二代目 国貞作)』のほか、掛け軸、絵皿、鉢など様々な工芸品に、蜃気楼は描かれています。

北海道小樽沿岸の石狩湾で発生する蜃気楼は、江戸時代から「高島おばけ」と呼ばれ、現在では小樽における春夏の風物詩として親しまれています。

まとめ

蜃気楼は、上層と下層の空気の温度差によって、光の屈折率が連続的に変化することによって生じる現象で、陽炎は地面近くの暖められた空気が、風などによって不規則に分布し、光の屈折が不規則に変化することによって生じる現象です。

蜃気楼には「上位蜃気楼」と「下位蜃気楼」の二つのパターンがあります。「不知火」は蜃気楼の一種といわれていますが、どちらのパターンなのかはっきりと分かっていません。

一般的に『蜃気楼』というと「上位蜃気楼」を指します。

『陽炎』は、気候現象のほか「焚き火」をした時にも、体験することができます。

蜃気楼は、限られた場所で、限られた季節に、稀に見ることができる現象です。

神秘的な蜃気楼の人気は高く、毎年4月から7月の晴れた日は、石狩湾の小樽市近郊や富山湾の魚津市近郊には、蜃気楼を一目みようと多くの人が訪れます。

車を運転していると、「逃げ水」をよく見ます。

北海道に住んでいて「逃げ水」を見ると、暑い夏が来るぞーって感じになります。