ねんごろは「男女が情を通じること」~語源とそれ以外の意味の解説~

言葉

ねんごろ(懇ろ)には、「男女が情を通じること」の他に「まごころでするさま」「親切。丁寧。」などの意味もあります。

万葉集が編纂された7世紀から8世紀のころには「ねもころ」「ねもごろ」という言葉が使われていて、「ねもころ」「ねもごろ」が転じて「ねんごろ」という語になりました。

万葉集に出てくる「ねもころ」の意味の解釈には「心をこめて。熱心に。」の他に、ねもこれの根には男茎の意味があるとするものもあるので、当時の「ねもころ」にも淫靡(いんび)な意味が含まれていた可能性もあります。

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ねんごろ(懇ろ)の意味

ねんごろ(懇ろ)の意味(参考:広辞苑

1・まごころでするさま。親切。丁寧。

「懇ろな言葉。」「懇ろにもてなす。」「懇ろに弔う。」等

例文:守り神として懇ろに祀りました。

2・念入りにするさま。

「懇ろにつくる。」「懇ろな演出。」等

例文:来場者全員に楽しんでいただけるよう懇ろにつくりました。

3・互いに親しみ合うさま。懇意。

「昔から懇ろだ」「懇ろに付き合う」など

例文:となりの家族とは懇ろにしています。

4・男女がひそかに情を通じること。情交のある関係。男色関係。

「懇ろになる」「懇ろな間柄」など

例文:となりの細君と懇ろになりました。

ねんごろ(懇ろ)の語源

ねんごろ(懇ろ)は、「ねもころ」が転じた語です(広辞苑)。

ねんごろの漢字「懇」は、音読みで【コン】、訓読みで【ねんご-ろ】、漢字「懇」一字の意味は「まめまめしく心をこめるさま」「せいいっぱい真心をこめるさま」です。

万葉集に「ねもころ」「ねもごろ」という言葉が出てくるように、7世紀ころには「ねもころ」「ねもごろ」という言葉が使われていました。(万葉集でもっとも古い歌は舒明(じょめい)天皇の時代(629年~641年)に詠われたと言われています。)

万葉集では、男女の想いを詠んだ歌でも「ねもころ」「ねもごろ」は使われています。

万葉集 2472 うちわたす ミモロのやまの イハホスゲ ねもごろ我は 片思ひぞする

万葉集 2473 すがのねの ねもころきみが むすびたる 我が紐の緒をとく人はあらじ  

万葉集2472の「ねもごろ」の解釈にも諸説あります。

解釈 ① :「熱心に」(学研古語辞典)

解釈 ② :「男茎がかたくなる」(万葉集新訳:歌の本音に迫る 岩戸貞彦著)

解釈 ③ :「くよくよと」(万葉集 折口信夫著)

①・③は「ねもころ」に「懇」という漢字を当てた解釈です。

②は「ねもころ」に「根も凝ろ」という字を当てた解釈で、根はオハセ(男茎)の隠語だと著書に書いてあります。

②の解釈が正しいか?疑問ではありますが、「ねもころ」が転じて「ねんごろ」となった、現在の「ねんごろ」に「情交のある関係」「男色関係」という淫靡な意味が含まれているので、全くのデタラメと言えないのかも知れません。

ねもころ、ねもごろがいつ「ねんごろ」に転じたのか?いつから「懇ろ」という字が当てられたのか?は不明です。

まとめ

ねんごろな心のことを懇意(こんい)、ねんごろなさまを懇懇(こんこん)、親しみなれることを懇ろがる(ねんごろがる)、男女の関係を断つことを懇ろ切る(ねんごろきる)といいます。

ねんごろには、真心でするさま、親切、丁寧、互いに親しみ合うという良い意味がある一方で、男女が密かに情を通じる、情交のある関係、男色関係といった淫靡な意味もあります。

語源となっている「ねもころ」「ねもごろ」は7世紀には使われていた言葉で万葉集にも登場します。

現在、「ねんごろ」と聞くと、ほとんどの人は「男女が密かに情を通じる」ことを思い浮かべるようです。

日常会話で「ねんごろ」を使うときは、相手と状況を見極める必要があります。

嫁がお産で入院中にアホな上司に、

「嫁の母親と懇ろにしてるので、なんの不自由もありません」

なんて言うと、とんでもない勘違いをされて、人間性を疑われることになるかも知れません。