月代には、「さかやき」・「つきしろ」の二つの読み方があります。
「さかやき」と読むと、男子の髪型(ヘアスタイル)のことを意味し、
「つきしろ」と読むと、①月 ②月がでようとするとき、空がしらんで見えること(月白)③「さかやき」と同じ という三つの意味をもちます。
月代とはどういう髪型なのか?なぜ流行したのか?月代の語源とは?わかりやすく、くわしく、解説します。
月代とはどういう髪型なのか
月代(さかやき)は、額(ひたい)から頭のてっぺんにかけて髪を半月状にそった髪型です。
月代という髪型は、平安時代からあったといわれています。
時代劇などで、侍(さむらい)や男性の町人がしている、なんとも珍妙な髪型は、月代に丁髷(ちょんまげ)をつけた髪型。
月代に丁髷(ちょんまげ)をつけるように、なったのは室町時代からといわれています。
月代(さかやき)のはじまり
平安時代、成人した貴族が烏帽子(えぼし)や冠をかぶるときに、前髪が額にかからないように毛を抜いたのが、月代の始まりです。
本格的に、広く半月状に毛を剃るようになったのは、戦で兜をかぶることが当たり前になった平安時代の後期ころ。
兜をかぶると頭に熱気がこもります。
その苦痛をやわらげるための髪型として、武士の間で流行したのが月代という髪型です。
当初、武士は、戦の時に月代スタイルにし、戦がないときは髪をのばしていました。
室町時代には、月代に丁髷という髪型が、武士の間で流行します。
丁髷には、兜と頭皮との間にすきまをつくり風通しがよくなる、クッションになるという利点があり、機能的な髪型として流行します。
戦のとき限定の髪型だった月代は、戦国時代になり、戦が長く続くようになると、武士の間で日常化します。
また、月代は勇敢さの象徴とされ、武家の男子が成人すると、額から頭のてっぺんにかけて剃る風習が生まれます。
こうして、戦国時代から、月代は武士の日常の髪型として定着していきます。
なぜ月代は流行したのか
武士の日常的な髪型だった月代は、江戸時代になると、武家だけではなく、職人・商人など庶民(医者・学者・坊主・貧しい人を除く)の間で流行し、
明治4年に発令された「散髪脱刀令(さんぱつだっとうれい)」まで流行は続きました。
なぜ、月代は流行したのか?
はっきりしたことは分りませんが、いくつかのそれらしい説があるので紹介します。
説①:主君への忠誠をしめすため
武士の髪型をすることで主君への忠誠をしめすため、一般庶民の間に広まったという説です。
のちに触れますが、さかやきは「さかいき(逆息)」が転じた語という説があります。
髪型を逆息にすることで、主君に対して「逆らう気はありません」という意志表示をしたのかも知れません。
説②:勇敢さの象徴
月代は、戦国時代から続く、勇敢さの象徴となる髪型だから、流行したという説です。
勇敢な男性は、モテル、というイメージが強かったようです。
三つの説のなかでは、一番納得のいく説ではないでしょうか。
説③:清潔にするため
頭を清潔にするために、武士のしている髪型をまねたという説です。
清潔にするのなら、月代ではなく、全体的に短くすれば良いのでは?
「禿げや薄毛をかくすため」っていう方が、まだ納得できると思いますが・・・。
月代(さかやき)の語源
月代(さかやき)の語源は「さかいき(逆息)」という語といわれています。
「さかやき」は「つきびたい」ともいわれ、額(ひたい)から頭のてっぺんにかけて髪を半月状にそった髪型です。
いつ頃から、つきしろを剃る髪型を「さかやき」というようになったか?定かではありません。
江戸時代初期(1633年)に書かれた俳書『犬子集(えのこしゅう)』に、「白き物こそ黒くなりけれさかやきはそりし間もなく生出て」という徳元の俳諧があります。
江戸時代(1784年頃)に書かれた随筆『貞丈雑記(ていじょうざっき)』に、「古代の人はさかいきをそることなし。髪のもとどりをばかしらの百会の所にてゆふ也」という一節があります。
江戸時代には「さかやき」・「さかいき」という二つ呼び名がありました。
「さかやき」は「さかいき」の転じた語。という説が有力とされています。
しかし、どちらの語が先に使われ始めたのか?定かではありません。
「さかいき」は、鎌倉時代には使われていた語ですが、当時の意味は「あえぐこと・息苦しいこと・咳」。
兜の頂上に穴をあけ、その下の毛をそり、頭にこもる熱(気)を逃がすことを「さかいき(逆息)」といったのが、いつの頃からなのか?
さかやきという語は、いつの頃から使われていたのか?
いずれも定かではありません。
月代と書いて、なぜ「さかやき」と読むのか?
月の、音読みは「ゲツ」・「ガツ」、訓読みは「つき」
代の、音読みは「ダイ」・「タイ」、訓読みは「か(わる)」・「か(える)」・「よ」・「しろ」
音読みでも訓読みでも、月代を「さかやき」とは読めません。
もともとあった「さかやき」という語に、「月代」という漢字を当てたというのが定説になっています。
なぜ「月代」という漢字を当てたのか?
「月代」と書いて「つきしろ」とも読みます。
「つきしろ」という語は、鎌倉時代にはすでに使われていました。ただし、「つきしろ」は「月しろ」で「しろ」=「代」ではなかったようです。
1250年ころの仏教説話集『撰集抄(せんじゅうしょう)』に「年かたぶきて、もとどりをきり、月しろみえわたり」という記載があります。
当時、つきしろは、「額(ひたい)から頭のてっぺんにかけての部分」の呼び名を意味していました。
「つきしろ」を剃った髪型が「さかやき」です。
さかやきに漢字を当てる際、まず「月しろ」という語を考え、「しろ」には「代わりになる」という意味の「代」が当てられたと考えらています。
月代=月の代わりになるもの
月の神様である月読命(つくよみ)のご利益によって、月には特別な力があると太古の昔から信じられています。
月のように特別な力を秘めた髪型=さかやき=月代となったのではないでようか。
まとめ
月代(さかやき)は、額(ひたい)から頭のてっぺんにかけて髪を半月状にそった髪型です。
古くから、勇敢さの象徴だった髪型で、江戸時代には庶民の間にも流行します。
月代の語源は、「逆息(さかいき)」とされています。
しかし、月代と逆息、どちらが先に使われた語なのか?はっきりしたことは分からないので語源には疑問が残ります。
余談です。
髪が薄くなってきたので、ここ半年くらい、2週間に一度の割合でスキンヘッドにしています。
どういう訳かわからないけど、頭頂部の毛はほとんど伸びず、側頭部の毛だけがやたらと伸びます。
自然と月代に近い髪形に・・・。
これは、進化の過程なのでしょうか?
かつて格好いいとされた髪型に自然に進化していくのなら、はやめに進化を止めなければいけません。
幸い、私には子供がいません。
今日も安心して寝れそうです。