桃源郷・ユートピア・シャングリラの意味合いの違い

ユートピア 言葉

桃源郷とうげんきょう・ユートピア・シャングリラ、どれも「理想郷りそうきょう」を意味する言葉ですが、それぞれの理想郷には「違い」があります。

桃源郷は、中国の伝奇小説「桃花源記とうかげんのき」に由来する理想郷。

ユートピアは、ラテン語で書かれた小説「ユートピア」に由来する理想郷。

シャングリラは、イギリス人の書いた小説「失われた地平線」に由来する理想郷。

桃源郷・ユートピア・シャングリラの由来と、それぞれの理想郷の違いを、くわしく・わかいやすく解説します。

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桃源郷とは

桃源郷は、東晋とうしん末期から宋初期の詩人”陶淵明とうえんめい”の、伝奇小説「桃花源記」に由来する理想郷です。

「桃花源記」のあらすじ

東晋王朝の時代、武陵ぶりょうというところに住んでいた漁師が、桃の林に迷いこみ、不思議な村里にたどり着きます。

その村では、秦の始皇帝の支配からのがれ、外の世界との接触を完全にたった人々が、平和で豊かな暮らしをしていました。

漁師は、しるしをつけながら帰りますが、二度とその村に行くことができませんでした。

この物語から、”俗世間ぞくせけんをはなれた別天地”を称して「桃源郷」という言葉が生まれました。

誰からの支配も受けず、争いもなく、豊かな暮らしができる場所=「俗世間をはなれた別天地」=理想郷

ユートピアとは

ユートピアは、イギリスの人文主義者”トマス. モア”がラテン語で書いた、2巻からなる長編小説「ユートピア」(1516年刊行)に由来する理想郷です。

ユートピアは、モアが、ギリシャ語のou(否定詞)とtopos(場所)からつくった造語で、どこにもない場所=「理想的な社会・空想的な社会」を意味します。

「ユートピア」のあらすじ

小説ユートピアは、架空の人物”ラファエル”が、架空の諸国とくに”ユートピア島”で経験したことについて、モアと語り合う形で書かれています。

第1部:ラファエルが新世界への航海に参加したあとで、イギリスを訪れたときに語られる、社会への批判。

ヨーロッパの君主への批判・過酷な刑罰への批判・隷属れいぞくの解体による浮浪者や窃盗への指摘・地主による農地の囲いこみ、過酷な労働への批判、「おとなしい羊が大食いで乱暴になって、人さえも食べるようになり、畑、住居、町を破壊する」

第2部:ラファエルが行った”ユートピア島”での人々のくらしが語られています。

君主は存在しない・家の中には私有の物がない・6時間労働、女性も働く・余暇を教養を高めることにあてる・国民は自然な姿を愛する、「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」

この物語から、”想像上の理想の社会”を称して「ユートピア」という言葉が生まれました。

想像上の理想の社会=「自由と規律をかねそなえた共和国」=理想郷

シャングリラとは

シャングリラは、イギリス人ジェームス. ヒルトンの、小説「失われた地平線」(1933年刊行)に由来する理想郷です。

小説「失われた地平線」の舞台である”シャングリ・ラ”は、チベットの奥地にあるといわれているチベット仏教徒の理想郷”シャンバラ”がモデルになっています。

小説「失われた地平線」によって、シャンバラ=シャングリラと認知されていき、さらにF.D.ルーズベルト大統領が、メリーランドの大統領別邸(現在のキャンプ・デービッド)を、平和への願いをこめてシャングリラと名付けたことで、シャングリラ=平和の象徴として全米に広まります。

「失われた地平線」のあらすじ

「失われた地平線」は冒険小説です。

英国領事、英国副領事、アメリカ人の男性3人と宣教師の女性1人を乗せた飛行機が乗っ取られ、摩訶不思議なチベットの秘境「シャングリ・ラ」へと連れ去られます。

シャングリ・ラでの現世のわずらわしさから解き放たれた穏やかで不思議な世界のなぞが、世話役の老人によって、領事コンウェイに語られていきます。

・・・

この物語から”現世のわずらわしさから解放された穏やかな世界”を称してシャングリラという言葉が生まれました。

現世のわずらわしさから解放された穏やかな世界=「この世の楽園」=理想郷

備考)シャンバラはチベット仏教徒の理想郷で、その場所は定かでないが、雪山に囲まれたその地には、黄金の建物がたちならび、その地は蓮の花のような姿をしているといわれています。

桃源郷・ユートピア・シャングリラの違い

桃源郷もユートピアもシャングリラも、想像上の理想の世界です。それぞれ理想郷を意味する言葉ですが、その由来と、もともとの意味、意味合いには違いがあります。

桃源郷は「俗世間をはなれた別天地」、ユートピアは「自由と規律をかねそなえた共和国」、シャングリラは「この世の楽園」という意味の理想郷。

現在、ユートピアは、理想郷の総称として使われていますが、もともとユートピアは、ヨーロッパの理想の国家のかたちをいった言葉。

桃源郷は、仙人のすむ所、俗界をはなれた清らかな場所(世界)。

シャングリラは、悩みや苦しみのない場所、安楽にくらせる場所(世界)。

ユートピアは、場所というより社会によった理想郷で、桃源郷やシャングリラは、社会というより場所によった理想郷といえそうです。

まとめ

桃源郷もユートピアもシャングリラも、理想郷を意味する言葉ですが、意味合いが違います。

もともと桃源郷は「俗世間をはなれた別天地」、ユートピアは「自由と規律をかねそなえた共和国」、シャングリラは「この世の楽園」という意味の理想郷です。

理想郷とは、想像上の理想の世界のことです。

なので、人それぞれ、思い描く理想郷に違いがあっても、ちっともおかしくありません。

私の思い描く理想郷は、シャングリラに、ちょっとだけ刺激をプラスした感じです。

刺激がなさすぎても、つまらないだろうし、桃源郷みたいに清らかな場所だと、気を使って疲れそうだし、ユートピアみたいにみんなと一緒に働きたくないし・・・

みなさま、どのような理想郷をお望みですか?

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