ゾッとする、ゾッとしない、正しい意味と正しい使い方とは

ゾッとしない 言葉

「ぞっとしない」を「ぞっとする」の否定形と捉え、「恐ろしくない」の意味と誤解している人が50%を超えていることが、文化庁が行なっている「国語に関する世論調査」で明らかになりました。

「ぞっと」という副詞は主に恐怖によって寒気を感じるようなときに用いますが、「―しない」の形になったときの「ぞっと」は「怖い・恐ろしい」という意味ではありません。

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ぞっとするの意味と正しい使い方

ぞっとするの「ぞっと」(副詞)は、「寒さや恐ろしさで身の毛がよだつ・からだが震えあがるさま」を表す語です。

ぞっとするは、主に「寒さや恐怖で体が震える」という意味で用いられます。

「ぞっとする」は「ゾッとする」と表記されることがありますが意味は同じです。「ゾッ」をカタカナにすることで、「ぞっと」を強調する意図で用いられるようです。

ホラー映画の紹介などでも頻繁に用いられる「ぞっとする」ですが、新聞でもよく用いられる言葉なので正しい使い方をおぼえておきましょう。

「ぞっとする」「ゾッとする」の正しい使い方 ― 例文

1・暑い夏は「ぞっとする」映画で楽しもう!

2・人志松本の「ゾッとする」話

3・総務省は9月、少し「ぞっとする」内容の報告書を公表しました。

4・これがもし、テロを行うべく上陸した工作員であったらと思うと「ゾッとする」。

ぞっとする「強い感動が体を通りぬける」という意味でも用いられます。あまり使われることはありませんが、辞書にも載っている正しい使い方です。

5・「ぞっとする」ほどの美人

ぞっとしないの意味と正しい使い方

ぞっとしないは、「あまり感心しない。それほど面白いと思ったりするほどでもない。」という意味で用いられます。

「ぞっとしない」を「ぞっとする」の否定形と捉えるのは間違いです。「ぞっとしない」を「恐ろしくない」という意味で用いることはありません。

文化庁の「国語に関する世論調査」の結果(2016年度)では、「ぞっとしない」を「恐ろしくない」と答えた人が56%、本来の意味である「面白くない」と答えた人は23%でした。

日本人の半数以上が「ぞっとしない」を誤解しています。意味を正しく理解して正しい使い方をおぼえておきましょう。

「ぞっとしない」の正しい使い方 ― 例文

1・前評判の高かった映画だけど、「ゾッとしない」内容だった。

2・そのカーペットと家具の組み合わせは、「ぞっとしない」ですね。

3・今日の講師は「ぞっとしない」。

4・出席者が「ぞっとしない」連中ばかりで、ありきたりの雰囲気のパーティーになった。

5・なんとなく「ぞっとしない」んですよね。

ぞっとする元首相のスピーチ

「ぞっとしない」のように、誤用が定着している言葉は他にもたくさんあります。「存亡の危機」もそんな言葉のひとつです。

存亡の機とは「存続するか滅亡するかの重大な局面」を意味する慣用句ですが、多くの人が誤用である「存亡の危機」を正用と誤解しています。

「存亡の危機」という言葉はありません。「存亡の機」あるいは「存続の危機」の誤用です。

かつて誤用である「存亡の危機」を用いて、全世界に向けて演説をした、日本の首相がいました。

世界中の人々から、「正しい日本語を使えない日本の首相」とバカにされていたかと思うと「ゾッとします」ね。

1995年にアジアの国々に「おわびの気持ち」を示した村山富市首相(当時)の談話で、「存亡の危機」は用いられました。

「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)

(略)

わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。

(略)

「話のさわり」に間違えた日本語を用いたことで、「ゾッとしない」ことがとても残念です。

まとめ

「ぞっとしない」「存亡の危機」のように、誤用が定着している言葉はたくさんあります。

文化庁国語課の担当者者は、「存亡の危機は広く使われており、誤用というのは難しい」と指摘しましたが、公(おおやけ)の場では正しい日本語を使うべきです。

言葉は変化します。「的を得る」のように、かつては誤用とされていたけど、現在は正用とされている言葉もあります。

近い将来、「ぞっとしない」は「ぞっとする」の否定形で、「恐ろしくない」という意味をもつかもしれませんし、83%の人が使っている「存亡の危機」が正用となるかも知れません。

言葉が変化するのは良い事ですが、本来の意味を失うことは「ゾッとしない」ですね。

ちなみに「話のさわり」とは、「話の要点」のことで、「話の最初の部分」ではありません。

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