臍(へそ)を用いた慣用句の意味と語源・英語訳・用例~臍で茶を沸かす・を曲げる・を固める・へそくり

臍へそ 言葉

臍は「へそ・ほぞ・さい・せい」と読み、意味は「お腹の真ん中の小さなへこみ。お腹にあるおへそ」「物の中央にある高い部分やくぼんだ部分」「石臼などの重なり目にある小さな突起」。

英語(日常会話)で、お腹にある「おへそ」は「belly button」と言います。

臍(へそ)は、臍帯(さいたい)を通して、お腹の中で育つためにとても重要な役割をはたしていますが、生まれたあと(臍帯を切ったあと)なんのために、のこっていて、どういう役割をするのかは、未だに判明していません。

臍を用いた慣用句には、「臍(へそ)で茶を沸かす」「臍(へそ)を曲げる」「臍(ほぞ)を噛む」「臍(ほぞ)を固める」などがあります。

これらの慣用句の語源には、重要な役割をはたしていたときの臍に由来するもの、なんの役にたっているのか分らない臍に由来するものがあります。

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臍(へそ)で茶を沸かす

意味

おかしくてたまらないこと。ばかばかしくて仕方ないこと。

ひどくばかげていたり、子供じみていて、まともに相手にできない言動に対して、おかしくてたまらないと思う様子。

「臍(へそ)が茶を沸かす」「臍(へそ)が宿(やど)がえする」「臍(へそ)がくねる」も同じ意味で使われる慣用句。

「臍茶(へそちゃ)」は、「臍で茶を沸かす」の略。

英語訳

IT would make a horse laugh.

直訳:馬だって、笑っちゃうよ。

語源

語源・由来には諸説あります。

1・「へその上で湯がわくはずがない」ことから、あまりににもばかばかしくて仕方ないことの例えとして生まれた言葉。

2・笑ったとき、へそのあたりが大きく揺れるさまを、茶釜の湯が沸騰する様子に例えて、生まれた言葉。

3・笑うとへそのまわりが熱くなるように感じることから、生まれた言葉。

4・「へそを茶化す(ちゃかす)」から変化して「へそで(が)茶を沸かす」になったとする説。

3の説は、江戸時代の浄瑠璃にあるとする説で、他人のへそを見てバカにして大笑いするという意味の「へそを茶化す」に由来するという説です。

「茶化す」から、「茶を沸かす」に変化したとする説にはちょっと無理があるように感じます。

江戸時代には、「笑語於臍茶(おかしばなしおへそのちゃ)」という「へそで茶を沸かす」をもじった題名の滑稽本(こっけいぼん)があります。

どの説も決め手にかけますが、どの説も「笑える言動」が源になっています。

用例

1・あのバカ息子が2代目社長だって! 「臍で茶を沸かしちゃうね」

2・一億円の設備投資だって!「臍で茶を沸かしちゃうよ」

3・「臍で茶を沸かすような話し」だけれど、あいつ宇宙人に誘拐されたことがあるんだって。

臍(へそ)を曲げる

意味

すねる。機嫌を損じて意固地になる。

へそ曲がりは、性格がひねくれていて素直でないこと。また、そういう人。

英語訳

Get bent out of shape.

be bent out of shape.

へそを曲げる。bent out of shape は、人が腹をたてている、意固地になっていることの比喩的な表現。

語源

最有力説

臍(へそ)は身体の真ん中についてることから、自分の本当の気持ちを「臍」にたとえ、自分の気持ちを「真っ直ぐに表現できず」に、ひねくれることから、「曲がる」という語をあてて「臍曲がり」という語が生まれました。

臍を曲げるは、「臍曲がり」を動詞化した言葉で、「すねる」「意固地になる」様子を表現する言葉として生まれました。

用例

1・あの子はすぐに「臍を曲げる」から、一緒にいると疲れる。

2・彼女、「臍を曲げてる」みたいだから、話しかけない方が良いよ。

3・いつまで「臍を曲げている」つもりだ!

臍(ほぞ)を噬(か)む

意味

後悔しても、およばないこと。

どうにもならないことを悔やむ。

英語訳

to regret bitterly

直訳:とても後悔する

語源

最有力説

中国の年代記「春秋」の注釈書「春秋左氏伝」の故事に由来します。

自分で自分のへそ(ほぞ)を噛もうとしても噛めないことから、実行できないことへの悔しさ、後悔しても及ばなことを表現する言葉として生まれました。

用例

1・あーこれで退学だ!と彼は「臍を噬んだ」

2・「臍を噬む」くらいなら、最初から関係をもつな!

3・最後まで話を聞かないと「臍を噬む」ことになるぞ!

臍(ほぞ)を固(かた)める

意味

覚悟を決める。決心する。

「腹を固める」「腹を決める」「腹ができる」も同じ意味で使われる慣用句。

英語訳

to make up one’s mind

直訳 : 決心する

語源

最有力説

臍下丹田(せいかたんでん)とは、へその下にあるツボで、ここに力を入れると基礎がしっかりとし、腹がすわり、ぐらつかなくなる、と言われています。

「臍(ほぞ)を固める」は「腹を固める」同様に、へその下に力を入れて、ぐらつかない心(覚悟)を固めることを表現する言葉として生まれました。

用例

1・「臍を固めて」出直してこい!

2・「臍を固める」時がきた。

3・「臍を固めて」転職をした。

へそくり(綜麻くり・臍くり)

意味

へそくりがねの略。

倹約して、内緒で貯めたお金。

「へそくる」は、「へそくり」を動詞化した語で、意味は、内緒でお金を貯める。

英語訳

secret hoard

直訳 : 秘密で貯めたもの

語源

綜麻(へそ)で繰(く)って貯めた金銭。綜麻繰金(へそくりがね)が略されて「綜麻繰(へそくり)」になり、「綜麻(へそ)」が「臍(へそ)」と混用されるようになり、「へそくり」は「綜麻くり」「臍くり」になりました。

綜麻とは、織機にかけられるようにより合わせた麻糸で、麻糸を環状に幾重にも巻きつけたものです。

用例

1・「へそくり」はありません。

2・車を買う時に「へそくり」を使いました。

3・来月から「へそくろう」かな・・・。

まとめ

臍(へそ)は、生まれる前、母親と臍帯(さいたい)を通じてつながっていて、お腹の中で育つためにとても重要な役割をはたしていました。

だけど、生まれたあと(臍帯を切ったあと)なんのために、のこっていて、どういう役割をするのかは、未だに判明していません。

ちなみに、臍は腹膜とつながっているので、へそのゴマを、乱暴にとるのは、あまり良いことではないようです。ピアスを付けるときは必ず専門医に相談しましょう。

「臍で茶を沸かす」「臍を曲げる」は、なんのためにのこっているのか分らない臍を、揶揄(やゆ)して生まれた言葉かも知れません。

「臍を噬む」「臍を固める」は、生まれる前の臍の重要な役割から生まれた言葉かも知れません。

子供の頃、お腹を出して寝ていると「雷様におへそ取られるよ」って、よく叱られました。なんだかよく分らないけど、へそを取られると、たいへんな事になりそうで、その一言がとても恐ろしかった。

きっと、おへそには、なにか重要な役割があるように思えてなりません。

へそのないお腹を想像すると、なんだか薄気味悪くありませんか?

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