被告人の保釈が決まったとき、被告人は保釈金を納めなければ、釈放されません。
保釈金は、「保釈保証金」を簡単にした略語です。
保釈金は、慣例(かんれい)に従って決められ、保釈金の算定には具体的な定めはありません。
保釈金は、執行猶予付きの判決が見込まれる事件のとき、罪名にかかわらず、そのほとんどは「150万円を算定のスタート」にしています。
保釈金の最高額は、ハンナングループ牛肉偽装事件で元食肉販売会社会長が納めた20億円。
日本における保釈保証金(保釈金)の決め方をわかりやすく解説し、億を超えた保釈金の実例を紹介します。
保釈金は誰が納めても良い
保釈金は、誰が納めても問題ありません。
刑事訴訟法第94条 : 2 裁判所は、保釈請求者でないものに保証金を納めることを許すことができる。
犯罪を行った人または犯罪を行った疑いがある人が、起訴されると身柄を拘束されます。
起訴後、勾留されると、手続きをとらなければ、解放されません。
親族の葬儀や緊急で病院に行く必要がある場合は、「勾留の執行停止」の手続きをとることで、一時的に勾留が停止します。
勾留の執行停止の場合は、勾留の停止が認められても、保証金を納める必要はありません。
一時的ではなく、勾留を停止し、拘束を解く場合は、「保釈」の手続きをします。
保釈の請求は、被告人またはその弁護人・法定代理人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹によって行われます。
保釈が請求されると、裁判所が「逃亡のおそれがないか」「罪証を隠滅するおそれがないか」などを審理し、これらの心配がない場合に限り、裁判所は保釈を許す決定をします。
保釈の場合は、裁判所が定めた額の「保釈保証金(保釈金)」を納めなければ釈放されません。
通常、裁判所の審理に2日間かかり、その次の日に保釈許可決定がなされます。
保釈金の納付は、期限がきまっていませんし、誰が納めても問題ありません。
保釈金を納めると、数時間で釈放されますが、納めないと、勾留は続きます。
被告人にお金がなくても、家族・支援者などからの協力でお金を調達し保釈金を納めることで、被告人は釈放されます。
保釈金は150万円~
刑事訴訟法には、保釈金を決める具体的な算出方法の記述はなく、保釈金は過去からの慣例によって決められています。
刑事訴訟法第93条 :2 保釈金は、犯罪の性質および情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
裁判所は、これまでの経験則や世間一般の収入額などから、執行猶予付きの判決がみこまれる事件では罪名にかかわらず「150万円を算定のスタートとすることが多い」(産経新聞2019.1.21の記事より引用)
執行猶予付きがみこめない事件では、150万円より高い額が算定のスタートとなるようですが、明確な基準はなく、過去の慣例から算定をスタートする額を決めているようです。
保釈金は、被告人にとって、簡単に支払える額・痛くもかゆくも無い額ではなく、支払えそうだけどかなり辛いと思われる額・逃亡を躊躇するような額を算定して決定します。
被告人の資産が特別に多くなく、一般的な事件で執行猶予付きの判決がみこめる場合の相場は150万円~300万円。現実の問題として、被告人が調達できる範囲の金額を設定します。
実際は、弁護士が依頼者と納めることのできる金額を協議して、担当裁判官に面談しその範囲で保釈の許可をもらえるように交渉しています。
裁判所から、保釈許可決定がなされる時にはかならず「指定条件」がつきます。
この指定条件に違反すると、保釈を取り消され、保釈金も没収されます。
実際に保釈金没収となったおもな行為
海外に逃亡する・裁判所からの出頭命令にそむく・裁判所の許可を得ずに居住地を変更する・弁護人を通さずに被害者と連絡をとる・共犯者など事件の関係者と接触する
億を超えた保釈金のおもな事例
令和2年2月8日現在、日本における保釈金の最高額は20億円、没収された保釈金の最高額は15億円、保釈金が億を超えた事例は多数あります。
20億円 :浅田 満/元食肉販売会社会長 「ハンナングループ牛肉偽装事件」
15億円 :カルロス・ゴーン/元日産自動車会長 「日産・特別背任事件」(逃亡し保釈金は没収・過去最高の没収額)
15億円 :末野謙一/元末野興産社長 「住専をめぐる資産隠し事件」
6億円 :許永中/元不動産会社代表 「イトマン事件」(逃亡し保釈金は没収)
5億円 :村上世彰 「村上ファンド・インサイダー取引事件」
3億円 :堀江貴文 「旧ライブドアグループ粉飾決算事件」
2億円 :田中角栄/元首相 「ロッキード事件」
まとめ
保釈保証金(保釈金)は、150万円をスタートとして算定されています。
保釈金を決める具体的な算定方法はなく、慣例によって決められています。
保釈金は支払い可能な金額でなくてはならないので、実際は、弁護士が依頼者と支払い可能な金額を協議して、担当裁判官に面談しその範囲で保釈の許可をもらえるように交渉しています。
一般的な事件で、執行猶予付きの判決がみこめる場合の相場は、150万円~300万円。
過去最高額の保釈金は、浅田満元食肉販売会社会長が納めた20億円、過去最高の没収された保釈金は、カルロス・ゴーン元日産自動車会長が納めた15億円。
保釈許可決定がされるときは必ず「指定条件」がつき、これに違反すると、保釈を取り消され、さらに保釈金も没収されます。
保釈金を納めて保釈されても、自由になれるわけではありません。