ビッグブラザーの意味~絶対的な権力者は実在するのか

ビッグブラザー 社会

ビッグブラザーとは、絶対的な権力者(独裁者・支配者・指導者)を指す俗語です。

ビッグブラザーは、イギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に登場する、絶対的な権力者の呼び名「ビッグ・ブラザー」に由来します。

小説では、ビッグ・ブラザーを見たものは誰もいなく、本当に実在するのかさえ分らないのに、「ビッグ・ブラザー」は『全能であり、安全な生活・喜び・愛を与えてくれる、絶対的な権力者』として国民一人一人の意識の中に確実に存在します。

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小説「1984年」のビッグ・ブラザー

小説「1984年」のビッグ・ブラザーは、自身が指導する「オセアニア国」の国民を支配します。

「オセアニア」では、情報が統制され、私有財産が廃止されます。権力の象徴である「金」「領地」「情報」の全てを「ビッグ・ブラザー」に集中させることで、ビッグ・ブラザーは「オセアニア」における絶対的な権力者になります。

ビッグ・ブラザーを、見たものは誰もいません。本当に実在する人物なのかも不明です。

全ての国民は、ビッグ・ブラザーによる支配が始まる前の記憶を消され、教育によって記憶を書き換えられます。以前は「黒」だったものもビッグ・ブラザーが「白」と言ったら白、「2+2=4」だった真実もビッグ・ブラザーが「2+2=5」といえばそれが真実です。何が真実なのか?考えることも出来なくなります。

私有財産をうばわれ、かつての記憶の全てをうばわれ、とまともな思考をうばわれ、何が真実か?を考えることが出来なくなり、ビッグ・ブラザーは全能だと洗脳され、人々はビッグ・ブラザーを愛し、尊敬し、恐れるようになります。

ビッグ・ブラザーは四六時中、全ての国民の生活を監視し、彼の忠実な下僕である党員(思考警察・愛情省・平和省・真理省・潤沢省)と、彼を信じきっている人々によって、国民一人一人の食事・SEX・思想など生活の全てを統制します。

人々は、常にビッグ・ブラザーの視線を意識し、周囲にビッグ・ブラザーに抵抗する者がいないか目を光らせます。小説では、「ビッグ・ブラザーをやっつけろ」と寝言で言った党員が、自身の幼い娘に「思想犯」だと密告されて逮捕されます。

ビッグ・ブラザーは、おそらく実在しませんが、全国民の意識の中には確実に存在します。誰も本物のビッグ・ブラザーを見たことがないので、人々はビッグ・ブラザーに神秘的な印象を抱きやすくなります。

ビッグ・ブラザーの思想は、「安全で豊かな生活をする」唯一の術として、国民に浸透します。

ビッグ・ブラザーに抵抗する者

小説「1984年」では、主人公の党外郭メンバーのウインストン・スミスが党の政策に疑問を抱き、同じく党の政策に疑問を抱いている女性党員のジュリアとともに「ビッグ・ブラザー」に抵抗し自由な生活を営みます。

やがて、ウインストン・スミスとジュリアの生活は、「ビッグ・ブラザーの目(テレスクリーンという装置)」によって発見され、彼らは思考警察に逮捕されます。

彼らは、生かされます。ビッグ・ブラザーのもとでは、党の政策に抵抗した思考のままでは、死ぬことすら許されません。

思考警察によって逮捕された彼らは、党中枢の人間によって、拷問され徹底的に再教育されます。

”WAR IS PEACE”戦争は平和なり。”FREEDOM IS SLAVERY”自由は隷従(れいじゅう)なり。”TWO AND TWO MAKE FIVE”2+2=5。”IGNORANCE IS STRENGTH”無知は力なり。”GOD IS POWER”神は権力なり。

繰り返される凄惨な拷問によって、彼は過去の記憶をうばわれ、自らの意思で考えることが出来なくなります。

ウインストン・スミスはビッグ・ブラザーを全能の神として尊敬し、「安全で豊かな生活」「喜び」「愛」すべてを、ビッグ・ブラザーが与えてくれると信じて疑わなくなります。

彼は、党員として、「ビッグ・ブラザー」に、仕えます。

ビッグ・ブラザーに抵抗すると、凄惨な拷問によって、記憶を消され、思考を統制されます。思考を統制された人々は、ビッグ・ブラザーを完璧に信じるようになります。ビッグ・ブラザーを信じた人は、ビッグ・ブラザーに抵抗する人を許しません。

ビッグ・ブラザーによる監視

小説では、”BIG BROTHER IS WATCHING YOU”ビッグ・ブラザーがあなたを見ている。という見出しのポスターが街のいたるところに貼られています。

ビッグ・ブラザーは実在しているか、していないか不明です。

党による教育によって、ビッグ・ブラザーが全能で、すべてを見通すことができ、国民全員に「安全で豊かな生活」「喜び」「愛」を与えてくれる唯一の存在として、全国民の意識の中にビッグ・ブラザーは確実に存在するようになります。

小説ではテレスクリーンという装置を用いて、全国民を四六時中監視し、党の政策に抵抗する者を逮捕し、逮捕した者を「ビッグブラザーの信者」として再生します。

テレスクリーンの数をいくら増やしても、全国民の生活の全てを監視することは不可能です。

全国民の全てを監視するのではなく、「全国民にビッグ・ブラザーによって全てを監視されていると思わせること」で、党は全国民の生活と思考を統制しました。

おそらく実在しないであろう「ビッグ・ブラザー」に全ての権力を集中させ、彼の思想こそが唯一幸せな生活を営む術だと国民を教育し洗脳し、確実に全国民の意識の中で存在するするようにします。

ビッグ・ブラザーに抵抗するもの、彼の思想に疑問をもつ者は、「ビッグ・ブラザーの信者」によって密告され逮捕され、「ビッグ・ブラザーの信者」として再生されます。

やがて、全国民が「ビッグ・ブラザーの信者」となり、疑問や不満をいだくことなく(何が真実なのか?すら考えることができなくなり)、「ビッグ・ブラザー」に従うようになります。

ビッグ・ブラザーによる監視の目的は、全国民を「ビッグ・ブラザーの信者」にすることです。

まとめ

イギリスの作家、ジョージ・オーウェルが「1984年」を書き上げたのは1948年、出版されたのは1949年です。1948年に書き上げた、近未来のSF小説が「1984年」です。

1948年、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が樹立宣言をします。

ジョージ・オーウェルが、北朝鮮の独裁者一族による政治を危惧していたかどうかは不明ですが、偶然の一致とも考え難いです。

北朝鮮では、独裁者に逆らうと、命をうばわれてしまいます。生産力のある国民の命を奪うような、北朝鮮の独裁者は、本当のビッグブラザーにはなれません。ちょっと安心です。

現在、中国の監視カメラが激増し、国民が政府による監視に不安を抱いてます。

中国では、政府の政策や思想に抵抗する人を監禁するようです。こんな事実はないと思いますが、「監禁された人が記憶を消され、何が真実なのか?すら考えられない、政府の言いなりになるような人に再生させられる」ことがあると思うと怖いですね。

日本では、街のいたるところにカメラが設置され、主要道路にはNシステムという自動車ナンバーや車内を撮影するカメラが設置されています。日本でのカメラ設置は、あくまで防犯用ということですが、中には犯罪に利用されているカメラもあるようなので要注意です。

今のところ日本には、誰もが認めるビッグブラザーは存在していません。

日本におけるビッグブラザーは自称ビッグブラザーです。日本において自称ビッグブラザーは、会社や地方の自治体、学校や老人クラブなどの小さなコミュニティに存在している可能性があります。

やたらと威張り散らす人とか、なんでも自分の意見を押し付けてくる人などは、自分のことをビッグブラザーだと勘違いしている輩です。まともに相手をすると損しますね。

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