キセルの意味~キセルと無賃乗車の違い・なぜ不正乗車をキセルと呼ぶのか

キセル 社会

「キセル」とは「不正乗車」を指す俗語です。「無賃乗車」を指す隠語を「さつまのかみ」と言います。

キセルとは、「不正乗車」のことで、「正規の代金を支払わずに乗車すること」です。現実的には、ほとんどが鉄道で行われるのが「キセル」です。

無賃乗車とは、「ただ乗り」「1円たりともお金を支払わずに乗車」することで、鉄道、バス、タクシーなど料金の必要な移動手段のほとんど全てで行われています。

キセルも無賃乗車も犯罪です。キセルも無賃乗車も刑事的な責任を負う可能性があります。

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キセルとは~「キセル」と呼ばれる由縁

キセルとは、「正規の代金を支払わずに乗車すること」「乗車した全区間で有効な乗車券(きっぷ)を所持せずに乗車すること」です。現実的には、ほとんど鉄道で行われる「不正乗車」が「キセル」です。

キセルの事例

1:入場券を購入して出発駅に侵入し出発駅から乗車、「到着駅(目的地の駅)で知人から入場券を受け取り、到着駅の改札を通り外に出る」あるいは「無人駅を利用し改札を通らずに外に出る」。

2:乗車券の必要な子供の乗車券を購入せずに、子供とともに乗車する。

3:定期券を使用して、出発駅から乗車し、定期券の有効区間をこえて乗車、「到着駅で知人から入場券を受け取り、到着駅の改札を通り外に出る」あるいは「無人駅を利用し改札を通らずに外に出る」。

4:最低賃金区間の乗車券を購入し出発駅から乗車、乗車券の有効区間をこえて乗車、「到着駅で知人から入場券を受け取り、到着駅の改札を通り外に出る」あるいは「無人駅を利用し改札を通らずに外に出る」。

5:折り返し乗車。出発駅から目的地までの乗車券を購入または正当な定期乗車券を利用し、目的地とは逆方向の列車に乗り、目的地に向かう始発駅から乗車し目的地で下車する(目的地まで座って行く目的で折り返し乗車をする人がいます)。

キセルと呼ばれる由縁

きざみタバコを吸うための道具「煙管」のことを「キセル」といいます。時代劇で粋な女将がタバコを吸うときに使っている、細長いパイプがキセルです。

キセルは普通、タバコをつめる雁首と吸い口の部分に「金属」を用い、それらをつなぐラオの部分には「素通し」の竹が用いられます。

キセルの構造が、両側にだけ「金」が使われ、中間が「素通し」であることから、乗車区間の両側だけに「お金」を使い、中間にお金を使わない「不正乗車」を、「キセル」と呼ぶようになりました。

現在は、乗車区間の両側だけに「お金」を使う「不正乗車」に限らず、全ての「不正乗車」を指して「キセル」と呼びます。

無賃乗車とは~「さつまのかみ」と呼ばれる由縁

無賃乗車とは「ただ乗り」「1円たりともお金を支払わずに乗車」することです。

無賃乗車の事例

1・バス、タクシーなどで、目的地に到着後「お金を忘れた」等の理由で、後日料金を支払う約束をし、支払わない。

2・タクシーに乗り、目的地に向かう途中でコンビニなどに寄り、料金を支払わずに、そのまま逃走する。

3・鉄道において乗車券を購入せずに、無人駅を利用し自動改札を通らずに乗車し、無人駅を利用し自動改札を通らずに下車する。

4・鉄道において知人または他人の背後にはりつき、乗車券をもたずに自動改札を通過する。

さつまのかみと呼ばれる由縁

平安時代末期に「平忠度(たいらの・ただのり)」という武将がいました。

薩摩国の長官(薩摩守・さつまのかみ)だった平忠度は、薩摩守忠度(さつまのかみ・ただのり)として名を馳せます。

忠度(ただのり)の役職が「薩摩守(さつまのかみ)」ということから、無賃乗車(ただ乗り)を「さつまのかみ」と呼ぶようになりました。

ちなみに、狂言の名曲「薩摩守」では、「さつまのかみ・ただのり」の名を洒落で利用して、僧が船に「ただ乗り」しようとして失敗します。

「ただ乗り」を洒落で「さつまのかみ」とする隠語は、江戸時代から使われていたのかも知れません。

キセルと無賃乗車の罰則

キセルも無賃乗車も犯罪です。

犯罪とは罪をおかすことで、刑法や法規に規定する犯罪構成要件に該当する有責かつ違法な行為であり、決して許される行為ではありません。

キセルの罰則

鉄道を利用すると、鉄道会社と利用者のあいだで、運送利用契約が締結し、鉄道の利用者には、鉄道営業法、鉄道運輸規定や鉄道会社の定める旅客営業規則が適用されます。

キセルは鉄道営業法29条に違反します。

この規定は親告罪なので、鉄道会社が被害を訴えない限りは適用されませんが、この規定に違反すると2万円以下の罰金が課せられます。

キセルを目的として駅に立ち入ると建造物侵入罪に該当する可能性があります。

建造物侵入罪に該当すると、懲役3年以下または10万円以下の罰金に処せられます。

キセルを目的として、駅の自動券売機や自動改札機を利用した場合は、電子計算機使用詐欺罪に該当する可能性があります。

電子計算機使用詐欺罪に該当すると、10年以下の懲役に処せられます。

建造物侵入罪や電子計算機使用詐欺罪は親告罪ではないので、鉄道会社が告訴しなくても、逮捕、起訴されます。

キセルは、上記の刑事的な責任の他に、民事的な責任を負います。

鉄道会社が定める旅客営業規則が適用され、通常必要な運賃の2倍以上の金額を支払う必要がある場合もあります。

JR東日本の旅客営業規則では、キセルをした人は、通常必要な運賃に加え、さらにその2倍に相当する金額を支払わなければなりません。

無賃乗車の罰則

無賃乗車は詐欺罪に該当します。ちなみに無銭飲食も詐欺罪に該当します。

詐欺罪は「詐欺罪・刑法246条/人間をあざむく行為が対象」と「電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)/コンピュータなど人間以外を欺く行為が対象」に分けられます

詐欺罪で有罪になると、10年以下の懲役に処せられます。罰金刑はありませんが、詐欺行為によって取得した金銭は、もとの持ち主に返却する義務があります。

詐欺罪は未遂でも刑罰の対象になります(刑法250条)。

少額の無賃乗車なら、許してもらえるという考えは、許されません。

無賃乗車は、振り込め詐欺や結婚詐欺と同じ詐欺罪に該当します。

まとめ

キセルや無賃乗車はけっして軽い犯罪ではありません。

列車に乗って寝てしまい、乗り過ごし、目的の駅までの運賃を支払わずに引き返す。誰でも一度は経験がありそうな、この行為も「キセル」です。

ただし、明らかに故意でない場合は、見逃してくれる場合があります。故意でなくても「キセル」です、乗務員や駅員に注意された場合は、あくまで低姿勢で謝罪しましょう。きっと許してくれますよ。

冬の北海道は寒いです。夜は一段と寒さが増し、息をするのも辛いほどです。

終電で、乗り過ごし、引き返す電車もなく、無人駅でタクシーもなく、家までの道中コンビニも開いている飲食店もなく、寒さで酔もさめて、ただただ必死に歩き続けた、ことを思い出します。

電車に乗るときは、ちゃんと目的の駅で降りましょう。

「キセル」をすると辛い目にあいます。無賃乗車はもってのほかです。「キセル」も「無賃乗車」も絶対にしてはいけません。

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