道州制とは。メリットとデメリット、区割りなどの説明

道州制 社会

道州制導入に関する論議が、国政レベルで本格的に繰り広げられたのは、21世紀に入ってからのことですが、1927年には「州庁設置案(全国を6州に分ける案)」が提案されるなど、道州制導入に関する論議は、断続的ではありますが90年間も続いています。

道というと「北海道」をイメージしがちですが、もともとは中国に起源をもつ、行政区画の名称です。

州というと「アメリカの州」をイメージしがちですが、こちらも中国に起源を持つ、行政区画の名称です。
日本では、甲斐国を甲州、上野国を上州、信濃国を信州のように、地方(国)の名称に州が使われています。

「道」や「州」は、地方の中で一番大きな『行政区画』を意味します。

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道州制とは

道州制とは、現在の47都道府県を廃止して、全国を「道」や「州」という、広域的な自治体に再編する制度です。

アメリカ合衆国やドイツなどが採用している「連邦制」とは、似て非なるものです。

「連邦制」の場合は、州(地方)が「行政権」だけでなく、法律をつくる「立法権」や、法律に基づいて裁く「司法権」を、州(地方)と中央政府(国)が分割して有することが、憲法で明記されています。

一方で「道州制」に明確な定義はありません。
「道州制」が、意図していることは、国が持つ「権限」や「財源」を可能な限り道州(地方)に移譲することです。

住民が直接受ける行政サービスを、道州(地方)が独自に決められようにし、基本的に税財源は道州(地方)が独自にもつという事で、単なる都道府県の合併ではありません。

日本において「連邦制」を採用するとなると、憲法改正が必要となり、ハードルがかなり高くなります。
そこで、「連邦制」とまでは言えないけど、地方分権が進む制度として「道州制」という言葉が使われています。

道州制とは、地方分権という目標を達成するための手段であり、全国を「道」や「州」という、広域的な自治体に再編する制度です。

道州制の本質は、国・道州・市町村がそれぞれどの様な役割を担うのか、どの様な権限を国から道州(地方)に移譲すべきなのか、という点にあります。

2018年1月25日の衆参代表質問で、下地幹郎氏が「道州制」について次の質問をし、安倍晋三首相が答弁しています。

■下地幹郎氏(維新・比例九州)

第2次安倍政権発足当初、安倍晋三首相から道州制導入への言及もあったが、最近は聞かなくなった。道州制や国の出先機関改革をどう進めていくのか。

■安倍晋三首相

【道州制】現在、与党で検討が行われている。政府としても連携して取り組んでいく。国と地方のあるべき姿、地方分権改革について建設的な議論を進めて行く。(下地氏への答弁)

政府によると、道州制は「国家の統治機能を集約・強化するとともに、住民に身近な行政は出来る限り地方が担うことにより、地域経済の活性化や行政の効率化を実現するための手段の一つで、国と地方のあり方を根底から見直す大きな改革」です。

自民党は2012年12月の衆院選で「道州制基本法の早期制定を図る」「制定後5年以内の道州制導入」を公約にあげました。
6年が経過した、2018年1月25日の道州制についての安倍晋三首相の答弁にあるように、道州制については未だに与党で検討が行われている段階で、大きな進展はありません。

道州制のメリット

首相官邸のホームページには、地方制度調査会の答申として、道州制のメリットを3点挙げています。

① 「地方分権の推進と地方自治の充実強化」
 都道府権から市町村、国から道州へ権限を移譲することによって、住民の意思が反映されやすくなり、自己決定と自己責任を基本とした地域社会が実現するものと期待されます。

② 「自律的で活力のある圏域の実現」
 道州が圏域の主要な政治行政主体となり、圏域相互間や海外諸地域との競争・連携が一層強まり、ひいては東京一極集中が是正されるものと期待されます。

③ 「国・地方を通じた効率的な行政システムの構築」
 国と地方の重複行政に関する問題が解消され、道州が企画立案から管理施工までを一貫して実現できるようになり、行政の効率化と、責任の明確化が図られます。国と地方を通じた行政組織のスリム化、行政コストの削減も必要あります。

首相官邸ホームページより一部抜粋

道州制導入により期待できるメリットは「地域住民の意思が行政に反映されやすくなる」「地方都市が活性化し地方分権の実現ができる」「行政が効率化され行政組織のスリム化を実現できる」という3点です。

道州制によって期待される具体的なメリットを、我々の生活に身近な分野を中心に挙げます。

【幹線道路整備】 現在、県と県を結ぶ県間道路は、両県の進捗度に差があり、事業効果を発揮できない。道州制が導入され広域化されることで、幹線道路の整備が促進される。

【道路管理】 除雪作業について地域一体で計画を立てれるようになり、道路利用の利便性が増すとともに、管理コストが削減できる。

【青少年健全育成条例】 現在、各都道府県で有害図書・有害環境等の規則に違いがある。道州制導入によって、広範囲で規則等が整備されて有害環境が浄化される。

【災害対応】 府県域を超える大規模災害発生時に、応援要請や関係防災機関・国との連絡調整が簡素化し、迅速な対応が可能になる。

【特定医療】 高度医療や特殊医療に対応する施設整備について、県境を超えた広域的な対応が可能になる。

【感染症対策】 感染症はその発生が狭い地域にとどまらず、県域を超えた対応が必要です。道州制を導入することで、感染傷病床の整備や専門的医療機関の有効活用が図られる。

【無料職業紹介】 無料職業紹介が道州に移管されると、地域の産業行政や雇用行政との連携を図ることが出来るようになる。

国がもつ「権限」をどの程度、道州に移譲するのかは未定です。この度、挙げた分野とそのメリットは、「全国知事会・道州制特別委員会構成都道県」の資料を参考にしたものです。

道州制のデメリット

道州制導入によるデメリットは、次に挙げる5点です。

① 道州制を導入することによって、地域の特性に応じた臨機応変な対応を阻害する可能性がある。

② 道州制を導入することによって、そのほとんどで人口規模が巨大化する。巨大な道州を地方自治体とした場合に、住民の意思が反映されるか疑問である。現在より、住民から遠い地方自治体が出現する事になる可能性がある。

③ 道州制を導入することによって、経済の規模が拡大する。道州内の一部の大都市に人口が集中し、それ以外の地域で過疎化がすすむ。道州内において、地域間格差を招く可能性がある。

④ 道州制を導入することによって、地域活性化(地域資源)が集中した地域と減少した地域の双方に過大な投資を必要とする。行政の効率化などで削減されたコスト以上に、投資が膨らむ可能性がある。

⑤ 地方自治の視点から、旧都道府県に地方機関を置くと、地方行政が複雑化する。非効率的な行政運営がなされる可能性がある。

道州制に反対する人の中には、

「道州が国からの財源なしに独立採算でやっていけるとは思えない」

「地方自治体間での競争が激化し、地方間の格差が拡大しそう」

「地方に権限を移譲した場合、インフラの防災対策が不安だ」

「出身地の都・道・府・県がなくなってしまうのは寂しい」

「そもそも誰が道州制を望んでいるのか?必然性が分らない」

という意見をもっている人がいます。

道州制の区割りについて

自民党の道州制推進本部が平成24年9月6日に公表した「道州制基本法案(骨子案)」によると、全国に10程度の道州を設置するとあります。

平成30年1月25日の衆参代表質問において【道州制】に関する質問に対する安倍晋三首相の答弁は、「現在、与党で検討が行われている。政府としても連携して取り組んでいく。国と地方のあるべき姿、地方分権改革について建設的な議論を進めていく」(下地幹郎氏への答弁)でした。

道州制の区割りを含む法案について、与党としては、いまだ検討中ということです。

具体的な区割り(区域)が示されたのは、平成18年2月28日に地方制度調査会が、当時の小泉純一郎首相に宛てた答申書「道州制のあり方に関する答申について」が最後です。

この答申書には、3つの区域例が示されています。

区域例-1  9道州(北海道・東北・北関東信越・南関東・中部・関西・中国四国・九州・沖縄)

区域例-2 11道州(北海道・東北・北陸・北関東・南関東・東海・関西・中国・四国・九州・沖縄)

区域例-3 13道州(北海道・北東北・南東北・北陸・北関東・南関東・東海・関西・中国・四国・北九州・南九州・沖縄)

東京は南関東に属しています。

区域例-1は、各府省の地方支部局の管轄区域に準拠しつつ、人口の均衡にも配意し区分しています。

区域例-2は、これに社会経済的あるいは歴史的に一つの区域としてみなされる四国と北陸を設けたものです。

区域例-3は、さらに小さな地方支部局の例や、地域課題を共有する状況等を踏まえて、九州及び東北においてより小さな区域を設けたものです。

この答申書のなかで、区域の範囲(区割り)の設定条件に関する記述があります。

要約すると、「道州の区域(区割り)は、自立的で活気のある圏域の実現と効率的な行政システムを構築するため、人口や経済規模、社会経済的な諸条件、地理的条件、歴史的条件、文化的条件を勘案する必要がある。」ということです。

まとめ

道州制とは、全国を10程度の「道」や「州」という、広域的な自治体に再編する制度であり、地方分権という目的を達成するための手段です。

道州制が意図することは、国が持っている「権限」や「財源」を可能な限り道州に移譲することで、単なる都道府県の合併ではありません。

道州制導入については、いまだに与党内で議論されている段階です。

道州制には、「行政が効率化され行政組織のスリム化を実現できる」といったメリットがある一方で、「道州内において、地域格差を招く」といったデメリットも考えられます。

国と道州の役割・権限、市町村の役割・権限、適切な財政制度などの検討をし、現行制度よりも道州制を導入するほうが有効であることの合理的な根拠を示し、国民が納得したときに道州制は実現するでしょう。

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