「ひとりごち」の意味と正しい使い方~「ひとりごちる」「ひとりごつ」「ごちる」とは

ひとりごち 言葉

どの現代語の辞書を引いても「ひとりごち」という語はありませんが、小説などで「ひとりごち」という語を目にすることがあります。

そのどれもが、「ひとりごち」を「ひとりごつ」「ひとりごちる」と同じ「独り言をいう」という意味で用いています。

「ひとりごち」という語が、辞書に載っていないのは、「ひとりごち」が「ひとりごちる」の未然形・連用形だからです。「ひとりごち」を単独で使うのは誤りです。

「ひとりごち」を正しく用いるのなら、ひとりごち{ない}、ひとりごち{ます}、ひとりごち{た}のように「ひとりごち」の後ろに下接続語を伴う必要があります。

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ひとりごちの意味と正しい使い方

「ひとりごち」は、現代語の辞書にはのっていない語です。

学研古語辞典で「ひとりごち」と引くと、大隈言道(おおくまことみち)著の【歌論書】とあります。歌論書とは、「歌に関して批評的文学的見解を述べた文献」のことです。「ひとり言をいう」という意味ではありません。

「ひとり言をいう」という意味の語は、古語でも現代語でも「ひとりごつ(独りごつ・独り言つ)」です。

現代語「ひとりごち」の意味と正しい使い方

「ひとりごち」は「ひとりごちる」の未然形・連用形です。

『「ひとりごちる」は「ひとりごと」を活用させた文語四段動詞「ひとりごつ」から転じた語(学研国語大辞典 引用)』で、意味は【独り言をいう】です。

未然形とは、まだそうなっていないことを示す形です。口語では{ない}、文語では{ば・ず・む}などを伴って用います。

連用形とは、用言につらなるときの形または文中で文をいったん中止するときの形です。口語では{た}、文語では{き・けり・たり}などを伴って用います。

ひとりごちを終止形として用いるのは誤りです。

「ひとりごちる・独りごちる」自動詞上一段活用タ行 { }は下接続語例(学研国語大辞典)

未然形:ひとりご・ち{ない}

連用形:ひとりご・ち{ます・た}

終止形:ひとりご・ちる{。}

連体形:ひとりご・ちる{とき}

仮定形:ひとりご・ちれ{ば}

命令形:ひとりご・ちろ{。}

「ひとりごち」は、後ろに下接続語を伴って成立する語です。後ろに下接続語を伴わずに用いることは間違いです。

ひとりごちない:意味 ひとり言をいっていない。

ひとりごちます:意味 ひとり言をいいます。

ひとりごちた :意味 ひとり言をいった。

古語「ひとりごち」の意味と正しい使い方

「ひとりごち」は、「ひとりごつ」の連用形です。「ひとりごつ」の意味は【独り言をいう・つぶやく】です。

連用形とは、用言につらなる形または文中で文を中止するときの形です。文語では{き・けり・たり}などを伴って用いられます。

「ひとりごつ」自動詞・タ行四段活用 { }は下接語例(学研古語辞典)

未然形:ひとりご・た{ず}

連用形:ひとりご・ち{たり}

終止形:ひとりご・つ{。}

連体形:ひとりご・つ{とき}

已然形:ひとりご・て{ども・ば}

命令形:ひとりご・て{。}

古語としても「ひとりごち」に、下接続語を伴わずに用いることは間違いです。必ず後ろに下接続語を伴って用います。

ひとりごつ とは

ひとりごつ(独り言つ)とは、「ひとりごと」を活用(動詞化)させた語で、意味は【独り言をいう】です。

「ごつ」は、「・・・ごと」を含む名詞が動詞化された語で、意味は【ものを言う・言う】です。

まず、使うことのない言葉です。小説や日常会話で、目にすること、耳にすることは、ほとんどありません。

もはや死語となった日本語といっても良いかも知れません。

ちなみに英語に訳すと To talk to oneseif となります。

ひとりごちる とは

「ひとりごちる」は、私が調べた限りでは『学研国語大辞典』以外の辞書には載っていません。

「ひとりごつ」から転じた語が「ひとりごちる」で、意味は「ひとりごつ」と同じ【独り言をいう】です。

ひとりごちるという言葉は、日常会話で耳にすることはほとんどありませんが、時代物の小説などでまれに目にすることがあります。

ごちる とは

本来、「ごちる」単独に意味はありません。

まれに「ごちる」を「言う」という意味で用いた文章を目にしますが、これは作者の造語で、共通語ではありません。

最近SNSなどで目にする「ごちる」は、「言う」とは違う意味で用いられることが多いようです。

テレビ番組で使われている「ゴチになります!」から「ごち」=「御馳走」と捉えて、「ごちる」=「御馳走する」という意味で用いた文章を目にします、こちらも造語で、共通語ではありません。

*御馳走:意味 馳走の丁寧語。もてなし。特に食事などをふるまってもてなすこと。

まとめ

「ひとりごちる」「ひとりごつ」「ひとりごち」どれも、目にしたことはあるけど、耳にしたことはなく、一度も使ったことのない言葉です。

私が調べた限りでは、どの辞書をひいても「ひとりごち」は載っておらず、「ひとりごちる」は学研国語大辞典だけに載っている語です。

「ひとりごちる」を辞書で引いて、「ひとりごち」にたどり着きました。

「ひとりごちる」を「正しい日本語ではない」とする、記事や文章を目にしますが、「ひとりごちる」は辞書に載っている「正しい日本語」です。

正しい日本語だけど、今後も使うことはないと思います。無理に使って、相手にちゃんと伝わらなかったら、と思うと使う気になれません。

「ひとり言をいう」は「ひとり言をいう」と言った方が、しっくりしますね。

ちなみに「ひとりごと」の「ひとり」を「独り」と表記している国語辞典は、広辞苑・学研国語大辞典。「独り」「一人」両方表記している国語辞典は、大辞林・明鏡国語辞典・新明解国語辞典。

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