「琴線(きんせん)に触れる」言葉は、人々に感動を与えるとても良い言葉、「逆鱗(げきりん)に触れる」言葉は、目上の人を怒らせるとても悪い言葉です。
文化庁の調査では、約25%の人が「琴線に触れる」の意味が分らないと答え、約36%の人が「琴線に触れる」の意味を誤って答えました。
「心の琴線に触れて感涙にむせぶ」は正しい使い方、「心の琴線に触れて怒号が止まらない」は間違えた使い方です。
琴線に触れるの意味と語源~英語訳
琴線に触れるの意味は【良いものや、素晴らしいものに触れて感銘を受けること。感動や共鳴を与えること。】です。「琴線に触れる」とは、感動して共鳴する繊細な心境を表現する慣用句です。
琴線に触れるの語源は、琴線(琴に張った糸)です。心のずっと奥にある、感動や共鳴しやすい感情を、美しい音色を奏でる琴線にたとえていった語です。
同義語(同意語)は、「心を打つ」です。
対義語は、「無感動」です。
「琴線に触れる」と混同されることが多い「逆鱗に触れる」は同義語でも対義語でもありません、同じ「触れる」という語が使われているだけです。
英語訳
琴線に触れるを英語にすると
touch the heartstrings of ~ 「~心の琴線に触れる」
「heartstrings」は「心の糸(心の琴線)」という意味です。
あの映画は、私の心の琴線に触れた。
That movie touch the heartstrings of me.
感動する心境を表すという意味では
touch ~ heart 「~の心を打つ」「~を感動させる」
あの映画は、私の琴線に触れた。(あの映画に心を打たれた。)
That movie touched my heart.
琴線に触れるの正しい使い方
「琴線に触れる」とは、感動して共鳴する繊細な心境を表現する慣用句です。
感動とは、美しいものや素晴らしいことに接して心を奪われることです。「琴線に触れる」は、良い意味で用いる慣用句です。
「逆鱗(げきりん)に触れる」と混同して、【相手の怒りを買う】という解釈は誤りです。「琴線に触れる」を、悪い意味で用いることはありません。
「逆鱗に触れる」とは、【目上の人を激しく怒らせること】です。ちなみに「逆鱗に触れる」を、自分や目下の人について使うのは誤りです。
正しい使い方(正用例)
1・心の琴線に触れて感涙にむせぶ
2・みんなの心の琴線に触れる温かいドラマ
3・オッサン達の琴線に触れる懐かしいメロディー
間違えた使い方(誤用例)
1・私の態度が上司の琴線に触れて、激怒された。
2・心の琴線に触れて、怒号が止まらない。
3・やつの顔を思い出しただけで、心の琴線に触れて吐き気がする。
文化庁の調査結果
文化庁の実施している「国語に関する世論調査」で「琴線に触れる」の意味を尋ねた結果
(ア)怒りを買ってしまうこと・・・・・・・・・35.6%
(イ)感動や共鳴を与えること・・・・・・・・・37.8%
(ア)と(イ)の両方の意味で使う・・・・・・・1.4%
(ア)と(イ)のどちらの意味でも使わない・・・0.6%
分らない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24.6%
誤った意味で解釈している人が約36%、意味の分らない人が約25%。
(ア)と答えた人は「逆鱗に触れる」と混同していると考えられるけど、(ア)は、正しくは「逆鱗に触れる」の意味ではありません。
(ア)+「分らない」=60.2%。
正しい意味で、正しく使う人が少数派になると、誤用が正用にとって変わりそうで、なんだか怖いし、ややこしいです。
みんなで「琴線に触れる」の正しい意味を理解して、正しい使い方を広めていきましょう。
まとめ
お琴の糸(琴線)に触れて奏でる美しい音色に「感動して共鳴する心境」をたとえる、「琴線に触れる」は、とても素敵な慣用句です。
おそらく生物のなかで人間だけがもっている、「美しいものや素晴らしいことに接して心を奪われる」という感情を、大切にしたいですね。
芸術に無感動な私は、ゴッホの絵を見てもラッセンの絵を見ても、有名なクラシック音楽を聞いても「心の琴線に触れる」ことはありません。
そんな私でも、映画をみていると「心の琴線に触れる」ことがあります。周りの目を気にしながら、たっぷりと涙を流しています。
人それぞれ「心の琴線に触れる」ツボは違って当たり前です。
心が疲れているとき、自分だけの「心の琴線に触れる」ツボをおすと、スカッとして元気になれる気がします。