人はなぜ酒を飲むのか~ビールへの欲求が農業を本格化させた

話題

サッカロミセス(サッカロマイセス)・セレビシエという酵母が自然界に古くからあります。

サッカロミセスは、ギリシャ語起源のラテン語の「糖(saccharum)」とギリシャ語の「菌(myces)」を合わせた語で、セレビシエはケルト語起源のラテン語「ビール(cerevisiae)」を意味する語。

この酵母は、果実の果糖やブトウ糖などの糖からエネルギーを得て、その副産物としてアルコールをつくります。

およそ1億2000万年前、私たちの祖先は、果実などを食べてくらす、哺乳類でした。

果実が熟して、サッカロミセス・セレビシエによってアルコールに変化した果実には、食べたり飲んだりすると酔って肉食動物に襲われるデメリットがある一方で、アルコールにより有害となる微生物を寄せ付けないというメリットがあります。

果実を食べて生活していた哺乳類は、アルコールの匂いで成熟した果実を知り、アルコールを分解する遺伝子をもつ種が有利となり数を増やしていきます。

こうして生き延びた哺乳類のうちの1種が、私たちの祖先です。

私たちの祖先である哺乳類は、生き延びるために、アルコールを利用し、進化しました。

人類は、「アルコール好き」の性質をもって、進化した哺乳類です。

最も古い人類が誕生したのは約700万年前、現在の人類ホモサピエンスが誕生したのは、15~20万年前。

彼らもアルコールを摂取していたに違いありません。

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ビールへの欲求が農業を本格化させた

「ビールへの欲求が農業を本格化させた」という説があります。

ビール発祥の地は、ティグリス・ユーフラテス川流域のメソポタミア平原といわれています。

紀元前4000年ころのメソポタミアの土器に、大きなか壺からストローでビールをのむ人物が描かれていることから、この頃にはこの地域でビールは普及していたと考えられています。

当時のビールは、動物の胃袋や、くりぬいた木や石、大きな貝殻を利用し、自然の穀物を採取して、自然発酵でつくっていました。

ビールなどの「お酒」を飲むと、アルコールが血液にのって脳に到達します。

アルコールが脳内で増えていくと、「ドーパミン」という快楽物質がどんどんふえ、気持ちがよくなり楽しい気分になります。

”アルコールによる快楽をしった人々は、安定してたくさんのビールを手に入れるため、「麦類」の栽培をはじめた”とする説です。

麦類の栽培がはじまったのは紀元前3000年頃、シュメール人がメソポタミア地方ではじめたといわれています。

当時のビールは、麦芽をつくり乾燥させ小麦をまぜて一度パンをやき、それを砕いてお湯でとき、自然発酵させたもの。

メソポタミア平原発祥のビールは、やがてエジプト、ヨーロッパへと広まっていきます。

現在主流の「ホップ」をつかうビールが初めてつくられたのは、11世紀頃のヨーロッパでのこと。

当時のヨーロッパでは、修道院が、ビール製造の中心でした。

ホップははじめ、薬草として栽培されていましたが、ビール製造のさいにホップを加えると美味しくなることがわかると、「麦芽・ホップ・水・酵母」でつくるビールが主流となり、ホップの栽培もさかんになります。

ビールの製造が、国家や民間中心になったのは、16世紀~17世紀にかけてのこと。

1516年ドイツ、バイエルン君主、ウイルへム4世は、「ビールは大麦・ホップ・水だけで醸造せよ」という『ビール純粋令』を発令。

現在のドイツでのビール造りの基準は「ビールは麦芽・ホップ・水・酵母だけで醸造する」というもの、現在も『ビール純粋令』を受け継いでいるようです。

香味ゆたかで、健康によく、日もちのするホップビールは、ヨーロッパ全土に普及し、やがて世界中に普及し、現在に至ります。

世界最古のお酒

現時点で確認されている世界最古のアルコール飲料は、今から9000年前(石器時代)のもので、

中国の賈湖(ジアフー)遺跡で発見され、「ブドウ、サンザシ、ハチミツ、米」をまぜて発酵させたアルコール飲料です。

未確認(証拠がない)のアルコール飲料で世界最古といわれているのは「ミード」。

ミードは1万年以上前から飲まれてるといわれている「ハチミツ」を発酵させたアルコール飲料です。

現時点で確認されている世界最古のワイン醸造は、今から8000年前(石器時代)のもので、

ジョージアのガダチリリ・ゴラ遺跡で発見されたもので、ブドウをつぶして発酵させた世界初の純粋な醸造ワインです。

まとめ

私たちの人類の祖先である哺乳類は、お酒(アルコール)を利用することで、生き延び進化しました。

人類は、アルコール好きの性質をもともともっています。

お酒をほどよく飲むと、食欲促進、ストレスの緩和、血行促進、人間関係を円滑にするなどのメリットがあります。

ただし、長期にわたって飲み続けると、肝臓などの臓器に障害をおよぼすこともあります。

また、短時間に大量に飲酒すると急性アルコール中毒になり、死んでしまう可能性があります。

アルコールが脳に到達すまで、およそ30分かかるといわれています。

脳が酔ったと感じる前に、どんどんお酒をのむと、時間がたってから、急激に血液中のアルコール濃度がたかまります。

泥酔から昏睡状態になり、突然記憶をなくしたり、最悪死にいたります。

私もお酒が好きでよく飲みます。

飲み過ぎると、記憶の一部がかけることもたまにあります。

軽度の急性アルコール中毒になっているのかも知れません。

お酒は、祖先が授けてくれた、とても「ありがたいもの」です。

人に迷惑をかけることのないよう、楽しく飲みたいですね。