針葉樹・広葉樹、秋に葉を落とす木そうでない木、きれいな花を咲かす木、美味しい果物のなる木、秋になると紅葉する木・・・木にはいろいろな種類があります。
古来、人々にとって木は、生活するうえでかかせないもの、大切なものとして扱われています。
日本のご神木には、神霊が宿るとされ、現在もその御利益にさずかろうと、多くの人が訪れています。
木から落ちた猿・木で鼻を括る・木に竹を接ぐ・木に餅がなる・木に縁りて魚を求む・木登りは木で果てる・木の股から生まれる・木の実は木の本・木もと竹うら・木を見て森を見ず・木兎引きが木兎にひかれる・木乃伊取りが木乃伊になる
それぞれの「ことわざ」の意味を解説します。
木から落ちた猿
「きからおちたさる」
意味:よりどころを失って、どうすることもできない
解説:猿は、木の上では能力を発揮できるが、木から落ちると能力を発揮できずに、無能になる。その様子をたとえた「ことわざ」です。
陸(おか)に上がった河童(カッパ)も同じような意味で使われる「ことわざ」。
木で鼻を括る
「きではなをくくる」
意味:無愛想(ぶあいそう)、そっけない、つっけんどんな様子
解説:「くくる」は「こくる」の変化した語で、「こくる」の意味は「こする」。
、
木で鼻をこする(かむ)と不愉快で、そのときの表情が、無愛想でそっけなく見える。その様子をたとえた「ことわざ」です。
木に竹を接ぐ
「きにたけをつぐ」
意味:調和がとれない・不自然である・筋道が通らないこと
解説:木と竹とは接ぎ木することができない(木と竹を接いでも枯れてしまう)。その様子をたとえた「ことわざ」です。
木に餅がなる
「きにもちがなる」
意味:ありえないこと。ありえないことを平気で言うこと
解説:餅のなる木など存在しない。そのことをたとえた「ことわざ」です。
「畑に蛤(はたけにはまぐり)」も同じような意味の「ことわざ」です。
木に縁りて魚を求む
「きによりてうおをもとむ」
意味:手段や方法を間違えると、目的を実現することはできない
解説:孟子梁恵王上の一節「かくのごとくなすところをもって、かくのごとくほっするところをもとむるは、なおき(木)によりてうお(魚)をもとむる(求むる)がごとし」からできた「ことわざ」です。
原文の意味は、”そのような手段で、目的を成し遂げようとすることは、「木によじ登って魚を捕ろうとするようなものだ」”。
木登りは木で果てる
「きのぼりはきではてる」
意味:得意の技能をもっている人は、得意の技能で災難を招いて身を滅ぼす
解説:木登りの得意な人は、木から落ちて死ぬ。得意な技能ゆえに、油断や慢心で災難を招く。その様子にたとえられた「ことわざ」です。
「川立ちは川で果てる」も同じような意味の「ことわざ」です。
木の股から生まれもせず
「きのまたからうまれもせず」
意味:人は、情愛や人情をもっている、理解している
解説:人は、木や石などと違い、情愛によって生まれる。そのことをたとえた「ことわざ」です。
「木の股から生まれる」の意味は、”情愛や人情を理解しない”こと。
木の実は木の本
「きのみはきのもと」
意味:全てのものごとは、もとの所へ帰る。自然の摂理
解説:木になった果実は、その木の根本に落ちる。「木の実は木の本」は、そのことをたとえた「ことわざ」です。
「木の実は本へ(きのみはもとへ)」とも言います。
木もと竹うら
「きもとたけうら」
意味:物事には、それにうまくあう方法や順序がある
解説:木は根本(もと)の方から、竹は先(うら)の方から割ると割りやすい。そのことをたとえた「ことわざ」です。
木を見て森を見ず
「きをみてもりをみず」
意味:細かいことにこだわって、物事の全体を見ないこと
解説:木ばかり見ていると、森全体を見ることはできない。その様子をたとえた「ことわざ」です。
英語の You cannot see the woods for the trees. がもとになった「ことわざ」といわれています。
木兎引きが木兎にひかれる
「ずくひきがずくにひかれる」
意味:負かしてやろうとした者が、逆に相手に負かされてしまう
解説:木兎(ずく)は、ミミズクのこと。木兎引きは、昼間ねているミミズクを他の鳥がつつくこと、または、その鳥。
昼間寝ているミミズクをおとりにして、ミミズクをつつきに来た鳥が、猟師にとらわれる。その様子をたとえた「ことわざです」
「木乃伊(ミイラ)取りが木乃伊(ミイラ)になる」も同じような意味の「ことわざ」です。
木乃伊取りが木乃伊になる
「ミイラとりがミイラになる」
意味:説得に行った人が、相手に説得されて、相手の側の人になってしまう。人を連れ戻しに行った人が、戻らずに同じように連れ戻される立場になる、または、相手の仲間になる
解説:ミイラをつかまえに行った人が、ミイラにおそわれて、自分もミイラになってしまう。その様子をたとえた「ことわざ」です。
「木兎引きが木兎にひかれる」も同じような意味の「ことわざ」です。
まとめ
木から始る「ことわざ」で、ほとんどの人が思い浮かべるのは、「木を見て森を見ず」。
木を見て森を見ずという「ことわざ」は、英語・ドイツ語・フランス語にもある「ことわざ」です。
日本には、英語で伝わったといわれています。
木は、人々の生活にかかせない大切なものです。
木から始る「ことわざ」、大切に使って、後世にのこしたいですね。