「たんこぶ」の正式な名称は「皮下血腫(ひかけっしゅ)」です。
皮下血腫とは、身体をなにかに強くぶつけたりしたときに、皮膚の中の細かい血管がやぶれて血液がたまった状態のことです。
脛(すね)など、頭以外にできた皮下血腫は「たんこぶ」と呼ばない(北海道では、脛などにできた皮下血腫を、「青たん」といいます)のに、
なぜ、頭にできた「皮下血腫」だけを、「たんこぶ」と呼ぶのでしょう。
たんこぶの呼び名の由来には諸説あり、いまだに定説とされる説はありません。
たんこぶの呼び名の由来とされる四つの説を紹介します。
たんこぶが出来たときは、冷やすのが基本です。
たんこぶが出来たときの処置や、病院を受診する目安、何科を受診するべきかは、
https://epark.jp/kosodate/enjoylife/k-child-bump_27082/(高座渋谷つばさクリニック院長 武井智昭先生 監修)
を参考にしてみてください。
たたいたときの音に由来する説
こぶは「瘤」で、表面がはれあがった部分のことで、
たんは、たたいたときの擬音語(ぎおんご・オノマトペ)の、「タントン」に由来するとする説です。
♪かぁさん、お肩(かた)をたたきましょ タントン タントン タントントン~
童謡「肩たたき」にもでてくる擬音語で、日本人には馴染み(なじみ)のある擬音語「タントン」から、
たたいてできた「こぶ」を「たんこぶ」と呼ぶようになったとする説で、はじめは、どこにできた「こぶ」も「たんこぶ」だったとする説です。
頭は、頭皮が薄くて、すぐ下に頭蓋骨(ずがいこつ)があり、血液が内側に広がれずに、外側に広がって「腫れる」ところ。
頭にできた「こぶ」は、目立ち、ほかの部位にできた「こぶ」は目立たないことから、
頭にできた「こぶ」を、とくに「たんこぶ」と呼ぶようになったという説です。
自分も子供のころ、「わるさ」をして、げんこで頭をたたかれ、よく「たんこぶ」ができていたことを思い出します。
納得できる説ですね。
たんこぶの色に由来する説
こぶは「瘤」で、表面がはれあがった部分のことで、
たんは、「丹」で「赤い」という意味に由来するとする説です。
釧路湿原でみられる、特別天然記念物の”丹頂鶴(タンチョウヅル)”は、頭のてっぺんが「赤い」鳥。
頭のてっぺんが「赤い」ので”丹頂鶴”と名付けられました。
「丹(たん)」には「赤い」という意味があります。
頭にできる「こぶ」が、赤くみえることから「丹こぶ(たんこぶ)」と呼ぶようになったという説です。
頭をぶつけると、赤くなって腫(は)れて、じょじょに青くなって、腫れがひいていき、黄色っぽくなって、治ります。
納得できる説ですね。
アイヌの言葉に由来する説
アイヌの言葉「tapkop(タプコプ)」に由来するとする説です。
知里真志保著「アイヌ語地名小辞典」によるとtapkopの意味は、
1・離れてぽつんとたっている円山;孤山;孤峰
2・尾根の先にたんこぶのように高まっている所
頭にできた「こぶ」の形状が、離れてぽつんとある円山の形状に似ているところから、たんこぶと呼ぶようになったとする説で、
tapが音変化して「たん」に、kopが音変化して「こぶ」になったとする説です。
この説が正しいとするなら、たんこぶは「たん」+「瘤(こぶ)」ではないことになり、
たんこぶがtapkopの音変化で生まれた言葉とするのは、無理があるようにいわれていますが、
アイヌの言葉に詳しい人が、頭にできた「こぶ」を、アイヌの言葉と合わせて、洒落(しゃれ)て「タプコプ」と呼んだ可能性はありそうですね。
たんは「痣(あざ)」に由来する説
こぶは「瘤」で、表面がはれあがった部分のことで、
たんは、「痣(あざ)」に由来するとする説です。
北海道では、脛などにできた皮下血腫によって、青い痣のようになって腫れることを「青たん」といいます。
たんこぶの「たん」と、青たんの「たん」は同じで、「たん」=「痣」とする説です。
なぜ、痣のようになって腫れることを「たん」と呼ぶのか?たしかなことはわかっていませんし、
青たんの「たん」がほんとうに痣を意味するのか?も不明です。
確かなことは、「青たん」と「たんこぶ」は、違うものということ。
定説になっているのは、北海道の方言「青たん」が全国に広がって、いまでは多くの地方(東京を含む)で使われているということ。
青たんの語源説には、花札の青短(あおたん)に由来していて、皮下血腫による痣が青くなり花札の青短のように見えるからという説もあります。
痣の訓読みは「あざ」、音読みは「シ」、
たん=「痣」とする説には、ちょっと無理があるように思えます。
まとめ
頭にできた「こぶ」だけをなぜ「たんこぶ」と呼ぶのか?
諸説あるけど、本当のことはわかりません。
広く言われている四つの説を紹介しましたが、どの説も間違えているかもしれません。
ちなみに、「目の上のたんこぶ」は、「目の上のこぶ」ともいい、なにかと目障り(めざわり)で邪魔(じゃま)になる人のたとえ。
どこにできた「こぶ」のことでも、「たんこぶ」と呼んでいた時代があったのかもしれませんね。