一生懸命(いっしょうけんめい)も一所懸命(いっしょけんめい)も正しい日本語です。
広辞苑で「一生懸命」とひくと、イッショケンメイ(一所懸命)の転とあります。
転(てん)は、変化することなので、「一所懸命」が変化して「一生懸命」という語が生まれたことになります。
現在は、「一所懸命」より「一生懸命」が多く用いられます。
ほとんどの新聞社・雑誌社・テレビやラジオの放送局などで、「一生懸命」が使われ「一所懸命」は使われていません。
一所懸命の意味
一所懸命は、もともと一生懸命とは別の意味で使われていました。
①・賜った1か所の領地に命をかけて、生活の頼みとすること。また、その領地。
②・物事を命がけですること。必死。一生懸命。
日常会話で一所懸命を使うとき、現在は①の意味で用いることはありません。
日常会話で一所懸命は、②の意味「物事を命がけですること。必死。一生懸命」の意味で用いられます。
新聞社や放送局などが「一所懸命」を使わないのは、「一生懸命」が「必死」という意味で世間に浸透し、「一所懸命」を使う人が少なくなったためです。
一所懸命は、南北朝時代(1336年から1392年)には①の意味で使われていた言葉です。
*「いっしょけんめいの地を安堵仕る」『太平記』 訳・「命をかけてきた一か所の土地の領有権を認めていただく」
南北朝時代には「いっしょけんめいの地」の形で使われることが多く、「一所懸命」は「物事を命がけですること」という意味では使われていませんでした。
②の意味で使われるようになったのは近世のことで、「命がけで事にあたる」意にひかれて「一生懸命」と書かれるようになりました。《参考・学研古語辞典》
一生懸命の意味
一生懸命は「一所懸命」から生まれた語です。
一所懸命の「賜った1か所の領地に命をかけて、生活の頼みとすること」という意味が、近世に変化して「命がけで事にあたる」となり、その意にひかれて「一生懸命」と表記されるようになりました。
①・物事を命がけですること。必死。
②・引くに引けないせっぱ詰まった場合。
日常会話で一生懸命は一所懸命同様①の意味「物事を命がけですること。必死」の意味で用いられます。
「一生懸命」は、江戸時代中期ころは①・②の意味で使われていましたが、現在、日常会話で②の意味で用いることはありません。
*「主人一生懸命の場にも有合さず」《浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵》①の意味
*「今が一生懸命、生死の境」《浄瑠璃・摂津国長柄人柱》②の意味
一生懸命と一所懸命には同じ「物事を命がけですること」という意味があります。
一所懸命から「一生懸命」という語は生まれましたが、今では「一所懸命」を使う人は少なく、「一生懸命」が「必死」という意味で世間に浸透したため、新聞社や放送局などでは「一生懸命」が使われています。
一生懸命の英訳
一所懸命・一生懸命「物事を命がけですること。必死。」の英訳は複数あります。
①・ 動詞 + as hard as one can
I ran as hard as I can. 一生懸命走った
②・ 動詞 + hard
I ran hard. 一生懸命走った
③・ for one’s life
I ran for my life. 一生懸命走った
④・ with might and main
I ran with might and main. 一生懸命走った
①・②はおもに会話で使われ、③・④はおもに文中で使われます。
①②③④以外にも、動詞+one’s best / for dear life などの英訳もあります。
ちなみに、「一生懸命がんばろう」の英訳は、Let’s try our best. / Let’s do our best. 必死というよりは、最善を尽くすに近いような感じですね。
まとめ
一生懸命も一所懸命も正しい日本語です。
もともとは「賜った1か所の領地に命をかけて、生活の頼みとすること」という意味で生まれた「一所懸命」が、「物事を命がけですること」と意味を変化させて、その意にひかれて「一生懸命」と表記されるようになりました。
現在は「一所懸命」はほとんど使われません。
「一生懸命」が「物事を命がけですること。必死」という意味で世間に浸透したため、ほとんどの新聞社・雑誌社・テレビやラジオの放送局などで「一生懸命」が使われています。
「いっしょけんめい(一所懸命)」と言っても間違いではありません。古い日本語を大切にし、後世に残すためにも「一所懸命」を使うことは、大事なことかも知れません。