「バタ臭い」の意味・語源・使い方を解説~バタ臭い顔とは

言葉

バタ臭い(バタくさい)とは、「西洋風な感じがする」「西洋かぶれしている」という意味の形容詞です。

日本で「バタ臭い」という言葉が使われ始めたのは、開国後といわれています。当時のバターは、かなり匂いがきつく、当初「バタ臭い」という言葉は、悪い印象の言葉でした。

江戸時代には、日本風の顔を表現する「うす塩顔」という言葉がありました。時期は不明ですが、それに対抗する西洋風の顔を「バタ臭い顔」と表現する様になります。

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バタ臭いの意味

【形容詞】

西洋風である。西洋風な感じがする。西洋かぶれしている。

バタ臭いの「バタ」は、トーストに塗ったり、料理に使う食品の『バター』です。

バタ臭いの「臭い(くさい)」は、「田舎くさい」「年寄りくさい」「バカくさい」「インテリくさい」などの臭いと同じ『・・・のような様子である』という意味です。

開国後、「バター」は西洋・西洋文化の象徴(しょうちょう)となります。

「バタ臭い」=「西洋くさい」=「西洋のような様子である」=「西洋風である」「西洋かぶれしている」という意味で使われる言葉です。

バタ臭いの語源

バタ臭いの語源となっているのは、食品の「バター」です。

バターが西洋の象徴だったころ、西洋かぶれしている人を揶揄(やゆ)する言葉として「バタ臭い」という言葉が生まれたと考えられます。

当時のバターは、樽詰め(たるづめ)だったため、かなり匂いがきつく、日本人のほとんどが嫌っていました。当初「バタ臭い」という言葉は、良い意味で使われていませんでした。

明治時代には、日本でバターの製造がはじまりますが、一般の家庭に浸透したのは戦後です。戦後以降のバターは、美味しくて栄養豊富な食品として国民に好まれ受け入れられます。

臭くて不味い印象だったバターは、戦後以降「香り豊か、美味しい、栄養豊富」という印象に変わります。

戦後以降「バタ臭い」という言葉は、良い意味でも、悪い意味でも使われるようになります。

「日本国語大辞典(小学館)」によると、「バタ臭い」の最古の用例は、1917年(大正6年)作家・田山花袋の回顧集「東京三十年」の作中の文「いやにバタ臭い文章だな」です。

この作品では、西洋かぶれしている文章を揶揄しています。

バタ臭いの正しい使い方

最近は、あまり使われることがない「バタ臭い」という言葉ですが、21世紀の現在でも使う人は使っている生きてる言葉です。

音楽学者の小島美子(こじまとみこ)さんは、「バタ臭い声を山の手声」、「下町のおじさんの声を下町声」と表現しています。

「バタ臭い」は前後の言葉(文)で、良い意味にも悪い意味にもとれる言葉です、上手に使わないと相手に誤解されるので要注意です。

「バタ臭い~」の正しい使い方

バタ臭い女(男)

良い意味での使い方 : バタ臭い女(男)がたまらなく好きです。

悪い意味での使い方 : バタ臭い女(男)がたまらなく嫌いです。

バタ臭い街 

良い意味での使い方 : 美しい洋館が並ぶ、バタ臭い街が好きです。

悪い意味での使い方 : すえた臭いのする、バタ臭い街が嫌いです。

バタ臭いデザイン

良い意味での使い方 : 日本車にはない、バタ臭いデザインが新鮮です。

悪い意味での使い方 : 脂っこくて、バタ臭いデザインの車には馴染めません。

このほか、バタ臭い顔(次項で解説)、バタ臭い外観、バタ臭い雰囲気、バタ臭い建物、バタ臭い内装、バタ臭い気品、バタ臭い魅力、バタ臭い愛称、バタ臭い人、等がよく使われます。

バタ臭い顔とは

西洋的な彫りの深い、目の大きい顔を「バタ臭い顔」と呼びます。

現在の国語辞典で「バタ臭い」を引くと、ほとんどの辞典の用例に「―顔」とあります。時期は定かではありませが、「バタ臭い顔」という表現は、古くから使われていたようです。

江戸時代の浄瑠璃(じょうるり)「惟喬惟仁位諍(これたかこれひとくらいあらそい)」に「薄塩顔(うすしおがお)」という表現があります。

古くから日本には「味」と「顔」を結びつける表現がありました。

バターが西洋の象徴となった開国後、和風の「薄塩顔」に対抗して、洋風の「バタ臭い顔」という言葉が誕生します。

バブル期には、和風な顔を「しょうゆ顔」、洋風な顔を「ソース顔」と呼びました。「しょうゆ顔」「ソース顔」ともに、死語となっています。

1990年代後半になると、和風な顔を「薄い顔」、洋風な顔を「濃い顔」と呼ぶようになります。

戦後以降、多くの日本人は西洋文化や西洋人の彫りの深い顔に憧れをもっていたので、「バタ臭い顔」は良い意味で使われることが多くありました。

現在のイケメンといわれる有名人は、必ずしも「濃い顔」ではありません。「バタ臭い顔」は良い意味でも悪い意味でも使われています。

最近「バタ臭い顔」という表現を小説など活字では目にしますが、日常会話では耳にすることはほとんどありません。死語になりつつある言葉かも知れませんね。

ちなみに、「バタ臭い顔の女性」を英語にすると a woman with occidental features となります。

まとめ

開国後、バターは西洋・西洋文化の象徴となります。当時のバターは匂いがきつく、日本人のほとんどが嫌っていました。

「バタ臭い」という言葉は、西洋かぶれした人を揶揄(やゆ)するために生まれた言葉です。現在と同じ「西洋風の」「西洋かぶれした」という意味で用いられましたが、戦前は良い意味で使われませんでした。

日本の家庭にバターが普及した戦後、バターの印象は「香り豊か、美味しい、栄養豊富」へと変化します。戦後、「バタ臭い」は、良い意味でも悪い意味でも使われるようになります。

子供のころ手塚治虫の漫画が好きだった私は、マグマ大使の敵でバタ臭い悪役「ゴア」、鉄腕アトムに登場するバタ臭い「お茶の水博士」、バタ臭さがあふれている「リボンの騎士」が大好きでした。

「三つ子の魂百まで」の言葉通り、今でも「バタ臭い」ものが大好きで、「バタ臭い異性」が大好きです。

私の友人は、和風の異性が好きで、「バタ臭い女性」をあまり良く思っていないようです。私は「バタ臭い」を良い意味で使うことが多いのですが、友人は好くない意味で「バタ臭い」をよく使います。

年齢を重ねるごとに、和食が好きになってきました。

なんだかんだ言っても日本人には「うす塩味」が合うのかも知れませんね。