「じょっぴん」とは北海道の方言で、鍵・錠を意味します。
じょっぴんの語源は諸説あります。
かつて北海道の住宅の玄関のほとんどは引き戸でした。戸にはカギも錠もなかったので、外からの侵入を防ぐため、住居の中から戸に「つっかい棒」を支(か)っていました。
「ぴん」には、【物を差しとめる針・ある部分を固定するために穴に差し通す棒(大辞林)】という意味があります。
じょっぴんとは、錠の代用で使った「つっかい棒」を、「じょうぴん」というようになり音変化して『じょっぴん』となったという説。
この説は、私が北海道で生まれ育った、お年寄り(もうすぐ80才)から聞いた説で、お年寄りの親から聞いた説だそうです。
じょっぴんの意味と語源
じょっぴんの語源には、私が北海道で生まれ育ったお年寄りから聞いただけでも、3つの説があります。
どの説も意味は『鍵・錠』です。
1・先に述べた、錠の代用で使った「つっかい棒」を「じょうぴん」というようになり音変化して『じょっぴん』となったという説。
2・じょっぴんの「ぴん」には、【最上のもの(広辞苑)】という意味があります。かつて鍵や錠の代用で使っていた「棒」にかわり、戸に錠がついたとき、その錠を「最上級の錠」ということで『じょうぴん』とよび、じょうぴんが音変化して『じょっぴん』となったという説。
3・じょっぴんの「ぴん」には、【第1(広辞苑)】という意味があります。錠のことを錠前(じょうまえ)とも言うことから(前=第1)、錠のことを『じょうぴん』とよび、じょうぴんが音変化して『じょっぴん』というようになった。
どの説も昔から北海道で語り継がれている説です。
じょっぴんはカウのかカケルのか?
北海道で生まれ育ったお年寄りに話を聞くと、じょっぴんを「かう」という人と、じょっぴんを「かける」という人がいます。
どちらも正しく、どちらも北海道では通じる北海道の方言で、『鍵や錠をかける』という意味です。
「かう」という人は「つっかい棒」をイメージして「支う(かう)」と言い、「かける」を使う人は「鍵や錠」をイメージして「掛ける(かける)」と言うようです。
鍵と錠の違い
錠とは、【錠 ①扉などに取り付けてしまりとする金具(広辞苑)】。
鍵とは、もともと錠を開閉する道具です。現在は、鍵=錠としての意味で使っても誤用ではありません【鍵 ②更に広く、錠(広辞苑)】。
もともとは、玄関ドアなどに付いていて、外からの侵入を防ぐための金具が「錠」で、玄関ドアなどの錠を開閉する道具が「鍵」でした。
現在は、「鍵」も「錠」も同じ意味で使われることが多いので、「窓の鍵かけた?」とか言っても誤用ではありません。
まとめ
「じょっぴん」とは北海道の方言で「鍵・錠」を意味します。
私が北海道で生まれ育ったお年寄りに聞いた「じょっぴん」の語源には諸説ありますが、じょっぴんの「じょっ」はどの説も「錠(じょう)」が音変化したもので、「ぴん」の捉え方にいろいろな説があります。
どの説が本当に正しいか分かりませんが、それぞれが昔から語り継がれてきた説なので、どの説も正しいとも言えそうです。
「じょっぴん」を使うのは、昭和以前に生また人です。平成以後に生まれた道産子は、鍵や錠のことを「じょっぴん」と言いません。北海道のほとんどの若者は「じょっぴん」の意味も知らないようです。
余談ですが、北海道で生まれ育った私(昭和生まれ)は「本州」のことを「内地(ないち)」と言いますが、平成生まれの道産子に「内地」は通じません。
「じょっぴん」「内地」「はんかくさい」・・・北海道の方言が道内で通用しなくなっていくのは、なんとも悲しいことです。