契約自由の原則(民法部会資料 参照)には、契約を締結し又は締結しない自由、契約の相手方を選択する自由、契約の内容を決定する自由、契約締結方式の自由が含まれていると解されています。
しかし、NHK(日本放送協会)との受信契約は、放送法の定めにより強制的に受信契約を締結させられます。
テレビを設置すると、契約した覚えがなくても、裁判によって受信契約の締結は成立します。
NHKとの受信契約は強制的に成立する
テレビなどの受信設備を設置すると、放送法64条1項の定めにより、NHK(日本放送協会)と受信契約をしなくてはいけません。
放送法64条1項
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信について契約をしなければならない
放送法の下では、NHKの放送を実際に受信しているか否かは関係ありません。テレビなどの受信設備を設置しNHKの放送を受信できるようになったなら、必ず受信契約をしなくてはいけません。
受信契約を承諾しない人に対してNHKは裁判を提起し、受信契約を裁判によって確定しなければなりません。
最高裁は、あくまで「受信契約の成立は裁判によらなければならない」との判断を示しています。
NHKとの受信契約に関する最高裁判決(平成29年12月)の概要
NHKからの受信契約の申し込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には、NHKがそのものに対して承諾の意思表示を命じる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立する。
2 受信契約の締結強制は憲法に違反しないか
受信契約の締結を強制する放送法64条1項の規定は、憲法(具体的には13条幸福追求の権利、21条表現の自由、29条財産権の保障)に違反しない。
3 受信契約を命じる判決の効果
承諾の意思表示を命じる判決の確定により契約が成立した場合、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。すなわちNHKは受信設備の設置の月までさかのぼって受信料を請求できる。
4 受信料債権の時効
判決確定以前に生じた受信債権についても、判決確定日から時効が進行する。受信料の消滅時効は契約成立時(受信設備を設置した日)から5年間とする。
以上の判決内容から、テレビを設置した人は放送を受信できるようになった時点からNHKとの受信契約を強制的に締結されます。
契約を承諾せずにいると裁判によって受信契約は成立し、受信設備を設置した日までさかのぼって受信料を支払うことになります。
NHKとの契約内容
テレビを設置する(NHKと受信契約をする)と、日本放送協会放送受信規約に基づく契約内容を承諾したことになります。
日本放送協会放送受信規約:(放送受信契約の種別)第1条 ・ (放送受信契約の単位)第2条 ・ (放送受信契約書の提出)第3条 ・ (放送受信契約の成立)第4条 ・ (放送受信料支払いの義務)第5条 ・ (放送受信料の支払方法)第6条 ・ (メッセージの表示)第7条 ・ (氏名、住所等の変更)第8条 ・(放送受信契約の解約)第9条 ・ (放送受信料の免除)第10条 ・ (放送受信料の精算)第11条 ・ (放送受信契約者の義務違反)第12条 ・ (NHKの免責事項および責任事項)第13条 ・ (規約の変更)第14条 ・ (規約の周知方法)第15条
「契約内容に満足して契約を締結する、契約内容に不満があるときは契約を締結しない」という契約自由の原則から外れていても、NHKとの受信契約は強制的に締結されます。
放送受信契約書を提出しなくても、テレビを設置すると裁判によって放送受信契約は強制的に成立します。放送受信契約書を見たことがなくても、裁判によって受信契約は成立してしまいます。
NHK受信契約の訪問員は、NHKから委託された会社の人で、NHKの職員ではありません。また、訪問員が受信料の要求をすることは絶対にありません。お金を要求されたら間違いなく詐欺です、気をつけましょう。
NHKのHP「NHK訪問員のお手続きについて」で、
NHKではお客さまに受信契約のお手続きをしていただく際に、親切、丁寧な説明に努め、手続き内容についてご理解をいただいたうえで、受信契約をお願いしています。
と記しています。
契約内容に納得していただいてとは記していません。そのため訪問員が、納得のいく契約内容(日本協会放送受信規約)の説明をすることはありません。
契約内容に納得できないというより、契約内容を知らされてないので、NHKと受信契約をしないという家庭が2割以上というのもうなずけます。NHK受信料の支払い率は全国平均で79.7%(平成29年度・事業所を除く)。
NHKは受信契約の内容(日本放送協会放送受信規約)についての説明、解説を、怠っています。
強制的に受信契約をさせられるのですから、NHKは全国民が理解できるような契約内容の説明をする義務があると思います。国民のほとんどが詳しい契約内容を理解していません。
受信契約の解約
NHKとの受信契約を解約するには、日本放送協会放送受信規約(放送受信契約の解約)第9条に従い、解約の手続きをします。
テレビを設置した住居に誰も居住しなくなる場合や、廃棄、故障などにより、テレビが全てなくなった場合以外は放送受信契約の解約はできません。
非常災害によって届出ができななかった場合は、当該非常災害の発生日に解約されたものとすることがあります(日本放送協会放送受信規約 第9条2項 参照)。
解約の手順
1:NHKのコールセンターへ連絡する(0120-151515)
2:解約用紙を送ってもらい、必要事項を記入し返送する
3:NHKが届け出の内容に虚偽がないかを確認する
4:解約完了
解約の手順2と3が逆になることもあります。テレビを設置していないことをNHKの訪問員(委託業者)が確認したのちに、解約用紙が送られてくる場合です。
この場合、解約用紙が送られてくるまで時間がかかります。
NHKは解約の手続きに対して好意をもっていないようで、何かと要求してきます。
テレビを廃棄したならば、廃棄した証明書などを要求されますが、そんなときは直接訪問し確認して欲しいと伝えるのが得策です。
少々時間はかかりますが解約は可能です。
また契約者が死亡した場合は「何もしない」で解約は成立します(契約者が死亡した場合のNHK受信料の解約について 参照)
まとめ
テレビを設置すると、現行の放送法第64条1項の定めにより、NHKとの受信契約は強制的になされます。
NHKの番組を見ないから、NHKが嫌いだからというような理由で契約を拒否することはできません。
契約をした覚えがなくても、契約内容の説明もなく納得がいかなくても、NHKとの受信契約は裁判によって成立します。
NHKとの契約書はあります。テレビを設置したら契約書をNHKの放送局に提出しなければいけません。
民放の番組やネットのニュース、スマートフォンの災害通知アプリなどで生活に必要な情報が簡単に素早く手に入る現在の日本において、受信料を支払う公共放送は本当に必要なのでしょうか。
そもそも公共放送って何だ?というようなNHKに対する不満の声をよく耳にします。
見たい人だけが受信料を支払いNHKの番組を視聴する、「契約自由の原則」に沿う契約にすることは、デジタル放送の技術を用いると難しいことではありません。
時代に即しない法律は改定すべきだと思います。