北海道の方言には、どくとくの言い回し(言い表し方・表現)があります。
ゴミを捨てることを、「ゴミをなげる」と言ったり、鍵をかけることを、「じょっぴんかう/鍵をかう」と言ったり、コーヒーをこぼすことを、「コーヒーをまかす」と言ったりします。
~さる・~らさるは、東北地方や北海道で話される方言で、「思わず~してしまう」という意味で使われる、どくとくの言い回しです。
北海道でよく使われる、~さる・~らさるの意味と使い方を例文をつかって、わかりやすく説明します。
たべらさるは「思わず食べてしまう」という意味
たべらさるは、食べ物全般に使われ、「思わず食べてしまう」という意味で使われます。
例文
A「あそこのザンギ定食なまら美味くない?」
B「美味すぎて、なまらご飯たべらさる」
訳
A「あそこのとりの唐揚げ定食すごく美味しいと思わない?」
B「(唐揚げが)美味しすぎて、(おかわり自由の)ご飯をつい食べ過ぎちゃう」
*なまらは「すごい」という意味で使われる北海道の方言で、「~過ぎる」というニュアンスを含んで使われます。
のまさるは「思わず飲んでしまう」という意味
のまさるは、とくにお酒を飲むときに使われ、「思わず飲んでしまう」という意味で使われます。
例文
A「あそこの居酒屋、最高だったべ?」
B「あずましくて、料理が美味いからのまさるんだよね」
訳
A「あそこの居酒屋、最高に良かったしょ?」
B「居心地が良くて、料理が美味しいから思わずお酒がすすむんだよね」
*あずましいは、「居心地が良い」という意味で使われる北海道の方言で、「落ち着く」とか「リラックスできる」というニュアンスを含んで使われます。あずましくては、「あずましいので」が転じた言葉、会話ではよく使われます。
みらさるは「思わず見てしまう」という意味
みらさるの見るは、ながめる・見つめる・見物・鑑賞・観戦という意味で使われ、診察・調査する・ためす・~してみるという意味では使われません。
みらさるは、「思わず見てしまう」という意味です。
例文
A「小股の切れ上がったいい女だねぇ」
B「おまえじゃなくても、みらさるよ」
訳
A「小股の切れ上がったいい女だね」
B「誰だって、見とれちゃうよ(我をわすれて見入っちゃうよ)」
やらさるは「思わずしてしまう・やってしまう」という意味
やらさるは、趣味や研究などの夢中になれる行為に使われ、「思わずしてしまう・やってしまう」という意味で使われます。
例文
A「ゲームのやり過ぎだべ?目、真っ赤だぞ」
B「途中でやめれなくて、最後までやらさったのさ。ゆるくないわ」
訳
A「ゲームのしすぎじゃない?目が真っ赤になってるぞ」
B「途中でやめることができなくて、つい最後までやってしまった。(ゲームするのも)らくじゃないよ」
*ゆるくないは「らくじゃない」という意味で使われる北海道の方言で、「疲れる」というニュアンスを含んで使われます。
わらわさるは「思わず笑ってしまう」という意味
わらわさるは、漫才などのおもしろいものをみて笑ったり誰かをばかにして笑うときに使われ、「思わず笑ってしまう」という意味で使われます。
例文
A「今年のM1、なまら笑った」
B「いままでで、一番、わらわさったわ」
訳
A「今年のM1、すごく笑った」
B「今まででみたM1で、もっとも笑っちゃった」
まとめ
道民がよく使う~さる・~らさるという言い回しは、「思わず~してしまう」という意味の方言です。
なかでも、「たべらさる」「のまさる」「みらさる」「やらさる」「わらわさる」はよく使われます。
ほかにも「いかさる」:「思わず行ってしまう」/「いわさる」:「思わず言ってしまう」/「おささる」:「思わず押してしまう」/「よまさる」:「思わず読んでしまう」などもよく使われています。