北海道の方言、やっくい、さっくい、の意味は「やばい」、でも、使い方にはちゃんとした違いがあります。
「やっくいぞ!おまえ、昨日、さぼってどこ行ってた?」
「あいつの家に行ったことある?なまら、さっくいべ」
やっこいの意味は「柔らかい」で、やっこは北海道では「反社」も意味します。
「この毛布、なまらやっこくて、気持ちいい」
「あいつの兄ちゃん、やっこだべ」
やっくい・さっくい・やっこい・やっこの意味と正しい使い方を、わかりやすく解説します。
北海道の方言”やっくい”は「やばい」
やっくいは、おかれた状況が危なくなったり、都合がわるくなったり、するときなどに使われる「やばい」を意味します。
やっくいは、「やっこく」、「やっけぇ」と語形を変えて使われることがあります。
例1)
「やっくいぞ!おまえ、昨日、さぼってどこ行ってた?」
共通語訳)やばいぞ!おまえ、昨日、さぼってどこ行ってた?
解説)基本的な”やっくい”の使い方です。やっくいぞ!で、状況が危なくなっていることを知らせています。
例2)
「話しかけるな!俺までやっこくなるべや」
共通語訳)話しかけないでください!俺まで”やばく”なるから
解説)やっこくは、やっくいの活用形。柔らかいを意味する”やっこい”の活用形も「やっこく」なので注意が必要。
例3)
「やっけぇー、もうちょっとで見つかるとこだった」
共通語訳)あぶなかった(やばかった)、もう少しで見つかるところだった
解説)やっけぇーは、やっくいの活用形。柔らかいを意味する”やっこい”の活用形も「やっけぇー」なので注意が必要。
北海道の方言”さっくい”は「やばい」
さっくいは、匂いや見た目の悪さの程度が、とても激しいときに使われる「やばい」を意味します。
さっくいは、「さっけぇ」と語形を変えて使われることがあります。
例1)
「あいつの家に行ったことある?なまら、さっくいべ」
共通語)あいつの家に行ったことある?とても、見た目が悪い(ぼろい)よな
解説)さっくいは、とても見た目が悪いという意味で使われます。さっくい=見た目・汚さがやばい。なまら=とても
例2)
「さっくくない?この肉、あめてるべや!」
共通語訳)とても臭くないですか?この肉くさってますよ!
解説)さっくいは、とても臭いという意味で使われます。さっくい=匂いがやばい。あめてる=くさっている。あめる=腐る
例3)
「さっけぇー!俺までやっこくなるから近寄るな!」
共通語訳)くっさ!俺までやばくなるから近寄るな!
解説)さっけぇーは、さっくいの活用形、おもに、なげくときに使います。さっくいとやっくいを同時に使うのは、上級者の使い方。
やっこいは「柔らかい」
北海道をふくむ、東日本では「柔らかい」ことを”やっこい”といいます。
北海道で”やっこい”は、「やっこく」「やっけぇ」と語形をかえて使われることがあります。
例1)
「このトンカツ、なまらやっこい」
共通語訳)このトンカツ、とても柔らかい
解説)基本的な”やっこい”の使い方です。
例2)
「この毛布、なまらやっこくて気持ちいい」
共通語訳)この毛布、とても柔らかくて気持ちがいい
解説)やっこくは、やっこいの活用形。やっくいの活用形「やっこい」と同じなので注意が必要。
例3)
「この肉、やっけぇー!」
共通語訳)この肉、柔らかーい!
解説)やっけぇは、やっこいの活用形、おもに感心してほめるときに使います。やっくいの活用形「やっけぇ」と同じなので注意が必要。
北海道で”やっこ”は「反社」
やっこの共通語の意味は「下僕」「あいつ」「冷ややっこ」「やっこ凧」。
北海道ではこれらの意味に加えて、やっこは、「反社会的行動をする人」「反社会的組織に属する人」「非行少年」「ならず者」「やくざ」という意味でも用いられます。
「なに食べたい?」
「やっこ」
この会話の場合の”やっこ”は北海道でも「冷ややっこ」の意味です。
例1)
「あいつの兄ちゃん、やっこだべ」
共通語訳)あいつの兄ちゃん、不良でしょ
解説)やっこ=非行少年。豆腐みたいに、ふにゃふにゃした少年という意味ではありません。
例2)
「やっくいって!あそこ、やっこのたまり場だぞ」
共通語訳)やばいって!あそこ、反社会的組織に属する人のたまり場だぞ
解説)やっこ=反社会的組織に属する人・反社会的行動をする人。冷ややっこや、やっこ凧のたまり場ではありません。
例3)
「やっこっぽい格好すんなや」
共通語訳)ならず者みたいな、ファッションしないで下さい
解釈)やっこ=ならず者・やくざ。豆腐みたいな、白一色のファッションという意味ではありません。
まとめ
やっくいは、状況が危なくなったり、都合がわるくなったりするときなどに使われる「やばい」という意味で使われます。
さっくいは、匂いや見た目の悪さの程度が、とても激しいときに使われる「やばい」という意味で使われます。
やっこいは、北海道をふくむ東日本では「柔らかい」という意味で使われます。
やっこは、北海道では、「やっこ」の共通語の意味に加えて、「反社会的行動をする人」「反社会的組織に属する人」「非行少年」「ならず者」「やくざ」という意味でも使われます。
北海道に住んでいると、やっくい・さっくい・やっこい・やっこ、どれも普通に使っているので、つい北海道の方言ということを忘れてしまいます。
この記事を書いていて、ふと思い出しました。
広島県出身(だったと思う)の学生アルバイトと一緒に現場に出た時、彼が、仕事で使う塗料を床にこぼしてしまいました。
「なまら、さっくいから、さっさと拭きとっちゃいな」というと
「えっ、なんですか?」
「とても、さっくいから、ちゃっちゃと拭きとっちゃいな」
「さっくいから?」
「臭いし、汚いから」
その後、彼と、北海道の方言の話で盛り上がり、楽しく仕事をしたことが思い出されます。
共通語を意識して話すのも大切かもしれませんが、方言を話すことで、相手との距離を縮めることもできます。
方言を大切にしたいですね。