あほを漢字で書くと「阿呆」・「阿房」、どちらの漢字も正しい表記です。
あほの意味は、おバカなさま、おバカなこと、おバカな人。
馬鹿より、かわいげのある言葉(語)として使う場合もあります。
バカの語源は、梵語(サンスクリット語)の”moha(慕何)”で、バカを漢字で書くと「馬鹿」。
バカとは?なぜ馬と鹿でバカなのか?これには諸説ありますが、その一つに「中国の古事」に由縁するという説があります。
あほ(阿房)の語源にも、「中国の古事」に由縁するという説があります。
あほの意味と用例
「あほ」は、もともとは「あほう」として使われることが多かった語でした。
あほうの「う」が、なぜ無くなって「あほ」になったのか?はっきりしたことはわかっていませんが、日常会話で「う」が聞き取り難く、徐々に省略さるようになり、今では「あほう」より「あほ」が多く使われるようになったといわれています。
ただし、「踊るあほうに見るあほう」「あほうの三杯汁」のように、いまでも「あほう」を使う”ことば”もあります。
※「踊るあほうに見るあほう」は、徳島の阿波踊り歌の出だし。「あほうの三杯汁」は、何杯も「汁」をお代わりすることをあざけっていう”ことわざ”。
あほ(阿呆・阿房)の意味
① おバカなさま :だらしないさま。知能や理解力がたりないさま。
② おバカなこと :ばかげたこと。つまらないこと。おろかなこと。
③ おバカな人 :おバカなさまの人。おバカなことをする人、しそうな人。
あほの用例
「あほ臭くって、やってられねぇ」:「あまりにおろかで、やってられない」
「あほ狂いしてんじゃねぇーよ!」:「女狂いしてんじゃねぇーよ!」
「あほ口たたくなよ」:「ばかげたおしゃべりを、するなよ」
「あほ面は、生まれつきだ」:「間の抜けた顔つきは、生まれつきです」
「なにやってんだ!あほたれが!」:「なにやってんだ!ばか者が!」
あほの語源
あほ(阿房)の語源も、バカの漢字が馬鹿になった理由も、中国のかつての王朝「秦朝(紀元前221から紀元前206年)」に関係するという説があります。
①「阿房宮(あぼうきゅう)」を語源とする説
阿房宮は計画では、東西に約680メートル、南北に約113メートル、1万人が座ることができるほど大きなものになる予定でしたが、多くの人と時間、財をかけたのに完成しませんでした。
始皇帝(しこうてい:秦朝の初代皇帝)の墓”驪山陵(りざんりょう)”と阿房宮の建設にあたって70万人以上の罪人を動員。
始皇帝とその子で2代目の皇帝”胡亥(こがい)”が造営工事を進めるも未完成。
このことから、おろかなことの象徴として「阿房宮」は日本でも周知されるようになり、おろかなこと・おろかな人を意味する言葉(語)の「阿房(あほう)」が生まれたとする説です。
※阿房宮は、「秦」の”始皇帝”が建設をはじめた大宮殿で、始皇帝が死んだあとも、2代目の皇帝”胡亥”によって工事は続けられますが、紀元前207年に未完成のまま「楚」の”項羽”に焼かれてしまいます。
始皇帝の頃からはじまった、長城・宮殿・庭園などの造営工事に動員された総人数は300万人(当時の全人口は約2,000万人)。国民は始皇帝、胡亥2代にわたって苦しめらました。
②「アタイ」を語源とする説
中国の江南地方で使われていた方言に、「阿呆(アタイ)」という”まぬけ・おバカな人”を意味する言葉があり、「阿呆」として日本に伝わり、日本語の読みに変換されて「阿呆(あほう)」が生まれたとする説です。
③「をこ」を語源とする説
”おこがましい”の語源となる「をこ」が、音変化して「あほう」になったとする説です。
※おこがましいの意味 :ばかげている・ばかばかしい・みっともない・さしでがましい・なまいき
①「阿房宮」を語源とする説が最も有力とされていますが、どの説にもこれといった確証がなく、どの説が正しいのか?これらのほかに本当の語源があるのか?定かではありません。
あほと馬鹿
ばかを漢字で書くと、なぜ「馬鹿」なのか?
諸説ありますが、その一つに、「中国の古事」に由縁するという説があります。
秦朝の時代に、始皇帝の死後あとを継いだ子の”胡亥”に仕えていた、宦官(かんがん)の”趙高(ちょうこう)”がクーデターを起こし、胡亥を殺します。
このクーデターを起こすとき、趙高は家臣達のなかで自分に従うのが誰なのか?みきわめるために、家臣達のまえで胡亥に「鹿」を「馬」だと言って献上します。
そして、見たまま「鹿」だと言った家臣達を処刑し、クーデターを成功させます。(参照:バカとは?なぜ馬と鹿でバカなのか?)
この古事から、バカを漢字で書くと馬鹿になったという説です。
あほの語源にも、胡亥に関する古事に由縁する説(あほの語源①)があります。
秦という王朝を、破滅させた張本人は”胡亥”です。
始皇帝は、中国の歴史上はじめて全ての国を統一した初代皇帝で、国民を虐げた暴君。
その子”胡亥”の政治がずさんだったため、ひときわ国民の反感をかいます。
秦朝に関する古事のうち、始皇帝と胡亥の親子の無能さばかりが目立つものが、日本で流布したのはそのせいかもしれません。
バカの漢字表記が「馬鹿」となったのには胡亥が、あほの語源となった「阿房宮」には始皇帝と胡亥の親子が関係していそうです。
あほと馬鹿の両方に関係する人は”胡亥”だけです。
まとめ
あほは、誰かをののしったり、からかったり、自分を卑下したりするときに使う言葉(語)です。
褒め言葉で、使うことはありません。
あほの語源にも、バカの漢字表記「馬鹿」の由来にも、秦朝にかかわる説があります。
これらの説が本当ならば、始皇帝と胡亥の親子は、そうとう国民に嫌われていたと推測できます。
人々から賞賛されるような事をし、後世に語りつがれることを「名を残す」といいます。
人々から非難されるような事をし、後世に語りつがれることを何と言うのでしょう?
「あほ」が正解かもしれませんね。