稲荷神社でお祀りしている神さまとは~狐じゃないけど、なぜ狐?~

稲荷大社 地方・風習・方言

稲荷神社は、「お稲荷さん」「お稲荷さま」とも呼ばれ、全国に3万社以上あります。

総本社は、京都府京都市にある”伏見稲荷大社”、お祀りしているご祭神は「宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)」、御利益は「商売繁盛・五穀豊穣など」。

参拝の作法は「二拝二拍手一拝」。伏見稲荷大社の参拝の作法にしたがって、丁寧に心をこめて気持ちをつたえます。

宇迦之御魂大神は、農耕の神さまで、狐ではありません。

狐は、宇迦之御魂大神の使い、神使(しんし)、眷属(けんぞく)です。

伊勢神宮のニワトリ、出雲大社のセキレイ、奈良県春日大社の鹿、滋賀県日吉大社の猿なども神使、神さまの使いとして動物が神聖視されていることは珍しくありません。

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稲荷神社・稲荷信仰とは

稲荷神社の総本社は、伏見稲荷大社(京都市伏見区深草薮之内町68番地)です。

山城の国風土記には、『豪族の秦伊侶具(はたのいろぐ)が、餅を射たところ、餅が白鳥になって飛んでいき、白鳥が降り立った山(イナリ山)の峰に稲がたわわに実った。』という霊異によりイナリという社名になったとあります。

伏見稲荷大社の社記には、『元明天皇の和銅4年2月壬午の日、伊侶具秦の公が、三柱の神を伊奈利山の三ヶ峰に祀ったのがはじまり』とあります。

イナリは現在の稲荷、伊奈利山は現在の稲荷山。

稲荷山は、稲荷信仰の原点です。

稲荷大神が、稲荷山に御鎮座されたのは、和銅4年(711年)2月初午の日。

稲荷神社において稲荷大神は、穀物の神さま「宇迦之御魂大神」です。

平安時代に、空海の開いた密教(真言宗)と結びつき、神仏習合した稲荷信仰は、貴族から庶民まで幅広く普及します。

宇迦之御魂大神は、商売繁盛・五穀豊穣などあらゆる生産分野へのご神徳があるのはもちろん、家内安全・交通安全・芸能上達の守護神としても信仰をあつめています。

狐がお稲荷さんの神使になった理由

狐は、「お稲荷さま」と結びつく前から、山の神に通じる霊性をもつと考えられていました。

「人をだましたり、化けたり、取り憑いたり、なにかと人に害をおよぼす」いう印象がつよい狐ですが、本来は神聖視された由緒正しい動物です。

宇迦之御魂大神の神使になった理由

狐がお稲荷さまと結びつき、お稲荷さまの神使になった理由には諸説あります。

1:宇迦之御魂大神の別名「御饌津神(みけつかみ)」が転じて「三狐神」となって、狐を宇迦之御魂大神の眷属とした。

2:山の神に通じる霊性があり、冬から春にかけて里に降りてきて、作物を食べ農作物に害を与えるネズミを補食する狐を農耕の神さま宇迦之御魂大神の使いとした。

など

なぜ、狐は白いのか?

稲荷信仰は、空海の開いた密教(真言宗)と結びつて普及します。

密教では、荼枳尼天(だきにてん)と、宇迦之御魂大神は同一視されています。

荼枳尼天の前身は、古代インドのダーキニー。ダーキニーは人の死期を6ヶ月前から予知し、人肉を食べる女夜叉。豊穣を司る女神から、性や愛欲を司る女神になり、夜叉になります。

ダーキニーは、大日如来の説法により仏道に帰し、善神となり、荼枳尼天となります。

日本の密教で荼枳尼天は、稲荷大神と同一視されます。

善神となった荼枳尼天は、稲の束を担ぎ、手に宝珠をもち、白狐に乗っています。

稲荷信仰と真言宗との神仏習合によって、宇迦之御魂大神の神使の狐=荼枳尼天の乗る白狐となり、宇迦之御魂大神の眷属=白い狐となります。

稲荷信仰と狐は深い関わり合いをもち、伏見稲荷大社には、狐の神霊を「命婦神(みょうぶのかみ)」という神様としてお祀りしている社もあります。

まとめ

稲荷神社は「お稲荷さん」「お稲荷さま」とも呼ばれ、商売繁盛・五穀豊穣・家内安全・交通安全・芸能上達などの御利益があり、多くの人から信仰され愛されています。

稲荷神社の総本社は伏見稲荷大社です。

伏見稲荷大社でお祀りしているご祭神は「宇迦之御魂大神」。

稲荷神社で印象の強い「狐」は、宇迦之御魂大神の神使・眷属、白い狐の印象が強いのは、密教と稲荷信仰が深い関わり合いをもつからです。

稲荷神社には、狛狐や白い狐の像が奉納されていますが、これは神使である狐を奉納することで、宇迦之御魂大神に願いが届くと思われているから。

油揚げや、いなり寿司をお供えするのは、狐の好物をお供えすることで、狐が宇迦之御魂大神に願いを届けてくれると言われているからです。

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